- ワーク・ライフ・バランスとストレス

2013/11/09/Sat.ワーク・ライフ・バランスとストレス

ワーク・ライフ・バランスという概念を考える上で肝要なのは、バランスは各人によって異なるということである。やりたくない仕事に長時間従事させられるのが苦痛であるのと同様に、やりたい仕事があるのに短時間で帰宅を強いられるのもまた苦痛である。したがって「当社は従業員のワーク・ライフ・バランスを考えて○曜日は早退日としています」という画一的な制度は矛盾している。ワーク・ライフ・バランスというカタカナからわかるように、そもそも日本にこの種の思想はない。理念なき実装が奇妙な結果を産むのは必然である。もっというなら、なぜワーク・ライフ・バランスであってライフ・ワーク・バランスではないのかと疑うこともできる。答えが存在しなくとも、我々は常に問える。些細な点に一々疑問を持つことが自由な人生に直結すると私は考える。

気分転換をしてストレスを発散する、というのも半ば自動化された言説である。ストレスが蓄積されている状況で転換するべきは、己の気分ではなくストレスを与えてくる環境のほうである。ストレスについて学ぶべきは、その発散方法という世俗的知識ではなく、ストレスは解消し除去すべきものだという原則のほうである。この基本的態度を全うするには各々の立場に応じた自由で柔軟な対処が要求される。気分転換で発散されるストレスは、気分転換で再び溜まるのである。しょせんは自身に対する詐欺でしかない。自分を騙しているうちは自由に生きているとは言えまい。