- 財団からの助成

2012/11/19/Mon.財団からの助成

申請していた留学助成の内定通知が届いた。ありがたいことである。ボスのグラントから給料をもらうのと、自分で食い扶持を用意するのとでは、やはり大きな違いがある。

今回の助成は、公益財団法人から頂く。財団 foundation はもちろん自前の基金を持っているが、それだけでなく、篤志家(丸めて言えば金持ち)や企業から寄付を募ってもいる。寄付行為は、善意を顕すだけではなく、税金対策にもなる。したがって、寄付金を含む助成は税金に準じるもの——国庫に行くか財団に行くかの違いしかないもの——だと私は考えている。大切に使いたい。

米国では、私立財団を中心に、大学への寄付が盛んである。二〇一〇年における米国の大学への寄付総額は二八〇億ドル、一位の Stanford University が集めた寄付金は六億ドルだという。ちなみに、平成二十三年度の東京大学の寄付金収入は七十二億円である。桁が一つ違う。

今年の山中伸弥先生のノーベル賞受賞で良かったことは、研究には金が要る、寄付をしてくれという、山中先生の堂々とした発言である。日本で研究機関への寄付が少ない理由は様々だと思うが、単純に、その存在や必要性が広く知られていなかったことも一因であろう。これを機会に、我が国でも私立の寄付・助成制度がさらに根付いてほしいと願う。

日本の寄付事情については、欧米の establishments に比べて、日本の富裕層にはノブレス・オブリージュ noblesse oblige の哲学が稀薄だからだという意見もある。確かにそうかもしれない。けれども、一般市民の喜捨精神は、むしろ日本が強いのではないかとも思う。それは震災復興に対する募金活動を見てもわかる。

日本に Bill Gates はいないが、善意に富んだ国民が大勢いる。文部科学省は大学に外部収入の増加を求めているが、米国の寄付モデルを真似るだけではなく、日本の国情に合わせた制度を整えることが肝心ではないかと思う。