2012/09/02/Sun.骨格筋と心筋
骨格筋と心筋の関係は謎が多い。
- 両者の構成単位は似ている。筋繊維や RyR など、筋収縮に必要な要素はほぼ同じである。
- にも関わらず、それぞれの構成要素に骨格筋型と心筋型が存在する。
- ある時期に筋肉遺伝子のセットが丸ごと複製されたのだろうか。
- しかし、各セットの発現を調節する転写因子群は骨格筋と心筋で完全に異なる。
- 筋肉に限った話ではないが、転写因子が先か下流の遺伝子が先かは、意外に難しい問題である。
- ミトコンドリアや葉緑体が細胞に取り込まれて小器官となったように、心臓も、実はある生物がより大きな生物に取り込まれた成れの果て……というのは妄想が過ぎるか。
- よく考えれば、発生学的には心臓は最も早く形成される組織なのであった。骨格筋の発生はいつも時間的に心筋の後である。この時間差は決定的かもしれない。
- 骨格筋は融合して多核になるが、心筋は融合しない。
- とはいえ、線虫の骨格筋は単核である。Drosphila の IFM は多核だったはず。
- いつから骨格筋は融合するようになったのだろうか。
- 骨格筋が融合する理由は恐らく、融合した方が収縮力が強いからであろう。
- しかしそれは結果論であって、融合する機構が誕生した理由にはならない。
- 骨格筋も心筋も分裂しない。が、平滑筋は分裂するんだよなあ。
- 繊維芽細胞を骨格筋に(MyoD)、繊維芽細胞を心筋に(GATA4, MEF2C, Tbx5)することができる。
- 骨格筋を心筋に、心筋を骨格筋にすることは可能だろうか。
- 骨格筋を心筋にすると、多核心筋細胞になる……のだろうか。
- 多核細胞に特異的な転写制御機構があっても良いはずだとは前から思っているのだが。
- 循環器病の研究者がする質問ではないが、心室と心房、心房と血管の境界ってどうなってんの?
- 骨格筋は運動神経、心筋は自律神経に支配される。
- 筋肉の分化に神経は必要ではない。が、実は神経存在下で骨格筋分化は亢進される。
- 骨格筋に自律神経、心筋に運動神経を接合するとどうなるのだろうか。
- というか、心臓に骨格筋(芽細胞)を移植する実験は山ほど行われている。
- でも、骨格筋に心筋を移植する実験は見たことがない。