- 壊れるスカウター

2012/06/28/Thu.壊れるスカウター

フリーザ「わたしの戦闘力は 530000 です」

(鳥山明『ドラゴンボール』「其之二百八十六 ナメック星の戦士ネイル」)

『ドラゴンボール』(DB)における戦闘力は特別に目新しい概念ではない。例えば『キン肉マン』には超人パワーという数値が登場する。しかし影響力という点では、やはり DB の戦闘力が随一であるように思う。なぜか。

DB の戦闘力を画期的たらしめたのは、それを計測するスカウターの存在である。この機械を介在させることで、戦闘力という極めて曖昧な概念に、客観性と定量性——いうなれば実在感——を導入することができた。少なくとも、読者にそのような印象を与えることに成功した。

(スカウターの登場と相前後して、悟空が n 倍界王拳を使い出すのは偶然ではないだろう)

とはいえ、強さって何なの、という素朴な疑問は残る。ルールが異なればそこで示される強さも変化するという事実は、格闘技を観ればよくわかる。また、相性の問題もある。A は B に強く、B は C に強く、C は A に強いという、ジャンケンのような関係は現実にも散見される。だが、戦闘力という一つの数字だけではこのような関係性を表現することはできない。強さのドラマを深めていく上で、いずれ戦闘力は足枷になる。

だから、スカウターはすぐに故障せざるを得なかったし、しばしば爆発さえしなければならなかった。……と思うのだが、鳥山明のことだから、実は単に、スカウターを描くのが面倒臭かっただけなのかもしれない。