- いい度胸(二)

2010/10/11/Mon.いい度胸(二)

将棋連盟 vs 情報処理学会の対決について、米長邦雄将棋連盟会長の見通しは甘過ぎるのではないかと心配したのが半年前。やはりコンピュータの実力は侮り難いものがあったようである。

勝敗はこの際どうでも良い。前にも述べたが、この対決は、勝とうが負けようが棋士に何の利益もないからである。コンピュータとのエキシビジョンマッチで棋界が盛り上がると考えているのなら、それは大きな間違いと言わざるを得ない。むしろ将棋にとって危機的な状況であることを認識すべきだろう。

女流王将が完勝したなら、「出直してきなさい」と穏便に収めることもできたろうに、これで将棋連盟は後に引けなくなってしまった。米長会長は勝負師かもしれないが、政治家ではない。コンピュータが勝ち続ける限り(コンピュータが負けるまで)、棋士との試合は組まれるであろう。

仮に羽生善治がコンピュータに負けた場合、将棋文化は致命的な傷を負うと思うのだが、そのとき、いったい誰が責任を取るのだろうか。将棋の——そして他のゲームやスポーツの——魅力と神髄は、勝った負けただけにあるのではないが、羽生が敗れてからそんなことを主張しても負け惜しみにしかならないのである。子供たちは将棋から離れ、棋界は衰退するだろう。

前回と同様の感想を繰り返すが、どうにも嫌な予感しかしないイベントである。