- 投票、無投票、反投票

2010/07/08/Thu.投票、無投票、反投票

二〇一〇年参議院議員選挙の投票用紙が手元にある。

票を投じたい候補者や政党がない場合、無投票に徹することも一つの見識である。しかし巷では、棄権行為は「投票率の低下」という現象へと歪曲され、非難される。そして、とにかく投票に行けと尻を叩かれる。

棄権は、選挙権を構成する重要な権利であり、否定されるべき行為ではない。むしろ、棄権という行為にほとんど政治的実効性がないことをこそ問題にすべきであろう。政治態度を表明するのに、投票以外の、そして棄権よりも有力な選択肢があっても良い。

そこで、反投票制度を提案する。普通、選挙において、投票者は自らの貴重な一票を投じる。これは「プラス一票」であり、投じられた票は候補者の得票となる。そうではなく、どうしても当選してほしくない候補者に「マイナス一票」を投じる行為、すなわち候補者の「損票」となる投票、これが反投票である。一種の拒否権といえなくもない。

実施方法は簡単である。投票所に、黒と赤のボールペンを用意する。投票したい者は、候補者や政党の名前を黒字で書く。反投票したい者は、赤字で書く。これは、票の総数は変わらず、候補者の数だけが二倍になったことに等しい。集計作業の増大も、許容の範囲内であろう。

反投票制度が実現すれば、選挙への参加率は確実に上昇するだろう。候補者に投ぜられた票の「賛否率」など、興味深い数字も得られそうである。得票二万・損票一万の候補者と、得票一万・損票ゼロの候補者、果たしてどちらが民意を代表するに相応しいか。考えてみるのも面白い。

選挙戦では、候補者間で交わされる舌戦や怪文書が凄まじいものとなり、候補者の品性と有権者の民度を反映した壮絶な泥仕合が繰り広げられるに違いない。候補者の名前を連呼するだけの現状よりは、よほど愉快である。

その存在が疑問視すらされている参議院の選挙では、これくらいの遊びがあっても良い。参議院議員候補を見る限り、彼らの全員が真面目に立候補しているとはとても思えない。したがって有権者も、全員が真剣に投票する義理はないのである。