- 犬義なき戦い

2009/12/30/Wed.犬義なき戦い

久々に MHP2G で遊んでいる T です。こんばんは。

妄想をした。

電線地中化工事、すなわち電柱の撤去が行われれば、犬たちのマーキングや縄張りは大きな影響を受けるに違いない。この電柱撤去は地方都市の公共事業であるため、広域的かつ同時的に実施される。したがって街臭の変化は急激であり、犬たちの混乱も極めて大きい。

舞台は飲食店街や歓楽街、登場するのは野良犬どもだ。

主犬公は、かつて飼犬であった野良犬である。飼犬としての躾を受けてきたため、野良犬にしては知識があり美学がある。人間に対して愛憎相半ばといった感情を潜在的に持っているが、日々の野良生活の中でそれが顕現することはない。生きることに必死だからである。

野良社会は厳しい。縄張りの維持、餌の確保、野良犬同士のランク付け、飼犬どもに対する羨望と憎悪と野良犬としての矜持、そして犬の目を通して描かれる人間社会——。

主犬公はある日、自分の臭路が乱れていることに気付く。原因を調べるために彼は奔走する。情報ソースは様々だ。野良犬社会に流れる噂、ラジオやテレビから得られる人間社会の動向などなど。かつて飼犬だった彼は、野良社会でワイルドに振る舞うとともに、一部の飼犬とは知的な交流を保ってもいる。飼主によっては飼犬が独自の情報を得ることも少なくない。主犬公にとって、彼らとのコネクションは重要な「生きる術」である。

テリトリーが撹乱された原因は明らかになったが、犬である彼らにはどうすることもできない。工事は着々と進行する。なすべきは、まっさらになった臭いのフィールドに新たな秩序を打ち立てること。守旧派があり革新派がいる。下克上を企む犬もいる。犬間のランクは彼らの肉体的な優劣でほぼ決まるが、同時に、彼らは社会的な動物でもある。弱者を率いて犬海戦術を展開する集団が現れる。傷つき敗れ、街を去る犬がいる。噂を聞いて、越境侵入してくる部外犬も出てくる。

そのような戦国時代を経て、街のバランスはひとまず落ち着いた。しかし電柱前後では、社会も、個々の犬が持つ哲学も変わってしまった。街自体の物理的な変化 (工事に伴い人の流れも変化を受け、犬たちの重要な食料源である飲食店にも栄枯盛衰があった)、犬同士の関係、人間との関わり、臭い付けの方法論も全てが一変した。

それでも生きていかねばならぬ。空腹を抱えながら、彼は今日も臭いをつけるために放尿する。