- 第 I 相臨床試験

2008/08/14/Thu.第 I 相臨床試験

早速、薬の服用を忘れた T です。こんばんは。

研究日記

ここ 2年ほどの研究で我がラボは、C という天然成分が某疾患に対して有効であることを動物実験で証明した。これを受けて、ヒトでの有効性を検討するための臨床試験を始めることとなった。まずは第 I 相 (phase I) 試験で、健康な成人に低濃度の C を投与し、副作用の有無を検討する。数十人のデータが必要だということで、俺も被験者になることを志願した。

C については、既に他の疾患に対して効くということが言われており、日本やアメリカで臨床試験が行われている。今のところ副作用の報告はない。我々の第 I 相試験では、過去に日本で行われた試験と全く同じ C (製薬会社が合成したもの) を、全く同じ量だけ内服 (12週間) する。内服前、内服 3時間後、24時間後、12週間後の血中 C 濃度を測定し、簡単な問診を実施する。

以下に臨床試験の実際を簡単に記述する。被験者には、実施責任者 (あるいは研究分担者) から臨床試験の背景、目的、内容が説明される。ここで、被験者が試験に参加する意志があるかどうかが確認される。最終的に、被験者は自由意志で同意書に署名する (同時に「同意撤回書」が渡される。試験はいつでも止めることができる)。次に被験者は試験前に必要な診断 (問診、測定など) を受け、試験 (今回の場合は薬の内服) が始まる。臨床試験にかかる費用は全て実施者が受け持ち、被験者に金銭的な負担は発生しない。また、被験者は試験終了後に謝金を受領する。臨床試験に用いられる薬 (物質、器具など) は、まだ医薬品・医薬機器として認可されていない場合が多いので、試験によって身体に異常が生じても、健康保険による診療は受けられない。しかし、臨床試験のための保険というものが別にあり、被験者が特に意識することはない。

——というところだろうか。これから試験が進むにつれて、新しいことを学ぶ機会もあると思われる。そのときは再び日記で報告する予定。

国際学会に応募した抄録が採択され、今年もアメリカで発表できることになった。今回はポスターでの採択で、3年連続で口頭発表というわけにはいかなかったが、まァ気楽に発表できるので良しとしよう。

今夜は大学に寄って研究員君とディスカッション。彼は動物実験をよくしており、随分と薬の勉強をしているので色々と教えてもらうことも多い。

俺も勉強しないとな。いや、その前に夏休みを取るべきなのか、人として。最近はできるだけ土日も休んでるんだけど……って、それが当然なのか。いまだにこのあたりの価値観が確立できていない。随分と反省したつもりなんだがなァ。