- 臨床例としてのエピソード

2008/06/16/Mon.臨床例としてのエピソード

落書き探しの旅に出ようかと思った T です。こんばんは。

先日の日記で紹介した「くねくね」という恐怖譚について、元部長氏が日記を書いておられたので、興味深く拝読した。

読んでいて気付いたのは、恐怖譚もまたヴァリアント問題を抱えているということだ。以前に俺はこう書いた。

昔話における各異説は微妙に違った小説でしかなく、「昔話」はそれらの集合を表す概念に過ぎない。つまり「昔話」と「小説」は属するレイヤーが異なるのだから、同列に論じる方がおかしい。

(「昔話のヴァリアントとしての小説」)

これは、「昔話」を「恐怖譚」に置き換えても通用する。それこそ柳田國男ではないが、昔話や恐怖譚がテキストとして定着するには、まず採取されなければならない。この点は極めて臨床的である。物語の各ヴァリアントは臨床例と言っても良い。この物語「群」をどう理解するか。

俺が「恐怖 "譚"」という単語を使っているのは、都市伝説などに対する漠然とした問題意識があったからだが、どうも思慮不足であったらしい。以前に書いた「恐怖譚 vs 探偵小説」という把握も、論点がズレていると言わざるを得ない。これは考え直す必要があるなあ。氏の日記を読んで、そういうことに気が付いた。

というわけで、「くねくね」について書こうと思ったことは棚上げになってしまった。代わりに、というのはおかしいが、昨日は怖い落書きの話を読んでいた。

暑夜のお伴にどうぞ。