- こんばんは!

2008/03/14/Fri.こんばんは!

好きなサイトが更新されていないと寂しくなるので、せめて自分の日記はできるだけ更新しようと心がけている T です。こんばんは。

俺がいつも日記を「こんばんは」で始めているのは、俺の好きだったサイトがそうしていたからだ。夜を待ってそのサイトにアクセスしてみると、必ず最初に「こんばんは」とあり、その下に新しい、しかも愉快な日記が続いているのだ。有名でも何でもないサイトだった。ネタがあり、論考があり、日常生活があり、ときに愚痴があるという、ネット上に腐るほど存在するありふれた日記だったが、俺には妙に面白く思えた。長らく読み続けていると、自分もその場その場の出来事に居合わせていたような気持ちになってくるから不思議なものだ。もちろん、俺が勝手に親近感を抱いていただけなのだが。俺はその日記にコメント一つしたことすらない。

随分と以前の話である。今はこのサイトはない。もう少し積極的にコンタクトを取っておけばなあ、と後悔しても全ては後の祭り。かの筆者が今どこで何をしているのか、俺には知る由もない。知ってどうするというわけでもないが、自分を楽しませてくれた文章を書く人間がどのような日々を送っているのか、やはり興味がある。そこに得るものがあるだろうという予感は拭い難い。

特に高名ではないサイト、自分が見付けて面白いと思った日記——、こういった存在に遭遇して自分だけの密かな付き合いを始め、続けるという行為は年々少なくなっている。Blog が普及してから、サイトはエントリー単位で評価されることが多くなった。ここ数年で閲覧者の平均的な情報収集能力は飛躍的に高まり、独自の境地を開拓している秘境のようなサイトも瞬時かつ広範囲に知られるようになった。自覚的に遮断しなければならないほどに流れ込んでくる断片的な情報の中で、細長い糸のような可能性を俺達は見失いがちだ。自分が面白いと思えるものを自分で発見するのはとても難しい。

頭や眼が濁ってくると、とんでもない錯覚に襲われる。本当にそれを面白いと思っているのかな? それは本当に自分で考えたことかね? 自分の妄想が自分にとって一番面白いのは当然のことのようだが、この桃源郷を維持するのは意外と難しい。ましてや他人に提供できるものなんて、とてもとても。