- 情報は物理的な実体を伴う

2007/11/03/Sat.情報は物理的な実体を伴う

飛行機の中で読むための本を物色している T です。こんばんは。

書物はバッテリーの心配をしなくても良い。だから「無人島に持って行く 1冊」というアンケートが成立する。メディアとしての耐久性において、本を上回る媒体を人類はまだ獲得していない。CD なんて、登場してからまだ 20年ほどなのに、早くも劣化し始めている。何て脆弱なんだ。

少し話は変わる。「デジタル情報は劣化しない」と一般的に言われる。これは原理的に正しいが、現実にはそうでもない。「情報」は抽象的な概念として扱われることが多いが、必ずや何かの「実体」を伴う具体的なものである。このことは忘れられがちだ。CD に物理的なキズが付けば情報は損なわれる。

文字情報が優れているのは、記録される「文字」が既に抽象化されているという点にある。手書きの「あ」という文字も、ディスクに記録された「あ」を示す文字コードも、物理的な存在のあり方は異なるが、意味のレベルでは全く同一のものである。ここに本の耐久性の秘密がある。文字がかすれていようと、一部が欠けていようと、それが「あ」であると判別できる限り、意味レベルの情報は全く損なわれない。

これは他の種類の情報にはない特色といえる。例えば絵画で、肉筆と印刷されたものが意味のレベルで同じだと考える人はいないだろう。また、元色の絵と色褪せた絵は別物である。音楽も同様。ライブと録音は違うし、新品の CD とすり減ったレコードは異なった音を発する。音楽には楽譜という記号化された記録も存在するが、そこに楽曲の本質が宿っているわけではい。

さて、「文字情報」と書いたが、これは要するに言語であり、つまるところは記号である。記号は一度「抽象化」というフィルターを通しているため、ヴァーチャルであることを免れない。「百聞は一見に如かず」。経験は言語化できるが、その逆はない。

研究日記

アメリカ出張中にできるだけ仕事が溜まらないようにアレコレと手を打っておく。