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2007/09/01/Sat.雑想

そろそろ来週の学会の準備をせねば、と思っている (だけの) T です。こんばんは。

今日の日記は、週末にゲームをやりながらダラダラと書いた文章をアップする。まとまりはないが御容赦を。

青酸ポタ

ナトリウムは英語で sodium というが、元素記号は Na なんだし、ラテン語の natrium を使えば良いんじゃないか、といつも思う。しかし、natrium acetate とか natrium salt っていうのは、少し言いにくい気もする。

カリウムは英語の potassium より、元素記号 K の起源である kalium の方が発音しやすい。アルカリという言葉とも関係が深いし。ちなみに kalium はドイツ語である。ところで、青酸カリの「カリ」はカリウムのことだが、もしも明治日本が英語で化学を学んでいたら、青酸カリは「青酸ポタ」になっていたのだろうか。フィクションの世界では、青酸カリが毒物の王として君臨している。が、果たして「青酸ポタ」でも同じ結果になっただろうか。弱そうじゃないか、青酸ポタ。

といえばヒ素も強そうだな。「そもそも『ヒ』って何よ?」という得体の知れなさが不気味である。「砒素」と漢字で書いても良い。「亜ヒ酸」なんて、日本語の文字列としては狂気の域にある。キチガイの日記に出てきそうな字の並びだ。

アセチル化酵素は acetyltransferase、脱アセチル化酵素は deacetylase である。わかりやすくてよろしい。しかしリン酸化酵素は kinase、脱リン酸化酵素は phosphatase という。こういうのは気持ち悪い。余談だが、demethyl (脱メチル) と dimethyl (ジメチル) の区別は日本人には難しい。

ES 細胞の無限増殖能と分化全能性

ES 細胞の定義には結構あやふやなところがあって、胚の内部細胞塊 (ICM; inner cell mass) から取ってきた細胞は全部 ES 細胞、というわけではない。ES 細胞には大きな特徴が 2つあり、

  1. 未分化状態での無限増殖能 (self-renewal)
  2. 分化全能性 (totipotency)

これらの条件を満たす細胞が ES 細胞として樹立される。

まず 1. だが、そもそも「無限」回の増殖を確認する方法はない。せいぜい、数百継体の間は未分化状態を維持できる、ということが確認されているに過ぎない。実験で使うにはそれで充分だが、では 1万回目の継体時に何が起こるか (起こらないか) は誰も知らない。慎重な総説などでは「事実上無限」という書き方がされているはずだ。

次に 2. だが、全能性は、内胚葉、中胚葉、外胚葉への分化能を確認することによって担保される。全ての成体細胞は、これら 3胚葉から発生する。したがって、3胚葉全てに分化できるなら、自ずと全細胞への分化能もあるはずだ、という考えである。ところが、いまだに ES 細胞からの分化が確認されていない最終分化細胞は多数存在する。「全能性」など誰も確認したことはないのだ。

もう 1つ、これは全能性の裏返しなのだが、ES 細胞からは、nature には存在しない細胞が分化してくるケースもある。同時に発現するはずのない 2つのマーカーを合わせ持つ、生体内には存在しない細胞。そういう異常な細胞が ES 細胞からは現れる (こともある)。全能性というポテンシャルは、このような側面も持つ。

都会のネズミと田舎のネズミ、どっちもネズミだろ

あえて逆説的に書くと、辺境にいることで世界の広がりを感じることができる。世界の中心では何でも揃うが、慣れてしまうと、その中心が世界の全てだと勘違いしがちになる。権力の中枢などが、その典型的な場だろうか。

自分は何でも知っている、という感情が、優越感になる意味が私にはよくわからない。知らないことがある方が楽しいし、世界を広く感じる方が面白いと思うんだけど。その上で、知るということが大事なんじゃないのかな。

経験とキャリア

「あなたのキャリアを生かして~」という文句はよく見かけるし、「しっかりとキャリアを積んで~」という考えを持って働く同世代の人間は多い。このキャリアというものを少し考えるに、「~という会社で……という仕事を X 年しました」というのは「経験」ではあるが、いささか主観的に過ぎるようにも思える。それが「キャリア」となるには、他人に証明できる何かが必要とされる。

経験は無意識的にも積み上げられるが、キャリアはそうではない。世知辛いけどね。