- Diary 2005/10

2005/10/31/Mon.

日付が変わってから洗濯をしている T です。こんばんは。

今日はもっと早く帰るつもりだったのだが。恒例のセミナーの後、先生と延々打ち合わせ。以前に連れていってもらったラーメン屋で、アブラギッシュなメニューの数々を平らげる。どう考えてもメタボリック・シンドローム予備軍でしかない。ふと携帯電話を眺めたら、11月になっていた。恐ろしい。

実験は怒濤のように進んでいる。データもロクに整理していないので、順調なのかどうかもよくわからなかったりする。少しスピードをゆるめて、検討や勉強をしたいとも思うが、なかなかそれができない。洗濯なんかしてる場合じゃないよ。とほほ。

2005/10/30/Sun.

古本屋で見かけた『論孟』という戦中の教科書の奥付に、「撃ちてしやまむ」という落書きを発見して、何とも複雑な気分になった T です。こんばんは。

朝からラボへ。適当に仕事を終わらせて、京都に来ていた KID JOE兄と 14時頃に落ち合う。遅い昼飯を食ってから、3軒ほど古本屋を冷やかす。「『古事類苑』とか欲しいっすね」「あれ面白いよね」。日曜日にこんな会話を交わしている 25歳のコンビは我々だけだと思う。

茶をシバいてから、軽く呑む。長い付き合いだが、KID JOE兄と 2人きりで呑むなんて、これが初めてではなかったろうか。とまれ、楽しい休日であった。感謝。

2005/10/29/Sat.

くじらカレーなるものを食った T です。こんばんは。

冬支度

久々の完全オフ。あいにくの雨だったが、午後にはそれも止んだ。今年の冬を越すための暖房を物色しに行く。俺は寒いのが苦手だから、時間のある内に購入しておかないと、まさに死活問題となる。エアコンもあるのだが、こいつとはどうも相性が悪く、必ず風邪をひく。

3年前の冬からハロゲン・ヒーターを愛用している。しかし今春、このヒーターは原因不明の故障に見舞われ、引っ越す際に処分してしまった。今回求めるのは、その代替品である。と思ったら、全く同じモデルが販売され続けていた。即決で購入。持ち帰って電源を入れてみる。暖かい。当たり前だが。

京都の冬は寒いと聞く。しかも我が家は、特に寒々しい造りをしている。床は板張り。壁は、コンクリートの上から直接壁紙を張っている様子である。夏場は大層ひんやりとしていて、暑いと言われる京都の夏もクーラーいらずで過ごせたのだが、それだけに冬が恐ろしい。仕事を始めたからには、そうそう寝込むわけにもいかない。結構プレッシャーを感じている初冬である。

2005/10/28/Fri.

7ヶ月前まではライダーだった T です。こんばんは。

バイク日記

私用があるとかで、先生が 17時半頃に帰宅。仕事は終わっていたので、俺とテクニシャン嬢も 18時過ぎに職場を後にした。このテクニシャン嬢はバイク好きで、いまだ免許は持っていないのだけど、いずれ 400 cc のバイクにまたがるプランを温めている。そんなわけで、元ライダーの俺とは時々バイクの話をする。

彼女は原付の免許は持っていて、HONDA の Benly というマシンで通勤している。原付だがスクーターではなく、ミッション式の原付である。ライダー志願の女の子らしい、可愛らしくて小回りの利くマシンだ。そんな彼女の愛車を運転させてもらった。ノーヘルで駐車場をグルッと回っただけなのだが、やっぱりバイクは良いね。久々にムラッと来る。

帰宅して、自分の不甲斐なさから愛車を手放してしまった日の日記を読み返してみる。それにしても何と閉塞感に満ちあふれた時期であったことか。よく頑張ったなあ、俺よ。いやマジで。明日はバイク雑誌でも立ち読みしてみるか。本気で欲しくなったらヤバいな。まだちょっと早い。

2005/10/27/Thu.

今週末の土曜日は休めそうな T です。こんばんは。

丸 1日オフってのは、実に 3週間ぶりである。さすがにここまで来ると、色々と溜まってくるわな。ES 細胞は毎日培地を交換しなければならないので、休日出勤は「半強制的」といった面がある。これが結構微妙なんだな。自分がやりたい実験をやるために出向くのは全く問題ないんだけど、そこに義務の色合いが帯びてくると、モチベーションのコントロールも重要な課題になってくる。何だかエラそうだが、大事なことではある。ヤル気に欠けるときの実験は、概して結果が良くない。どんな仕事でも同じだろうけれど。

飯を食って生きていくためには、これからずっと仕事を続けていかなければならないんだなあと、そんな当たり前のことを考えるとき、精神的なやりくりにも長ける必要を感じる。「自己管理」とはこういう意味か、などと変な気付き方をしたりもして。やってみなければわからないことって、本当にたくさんあるよな。

2005/10/26/Wed.

食欲が昂進している T です。こんばんは。

日本シリーズの阪神、ロッテに 4連敗で優勝を献上。試合内容でも完敗。ああ情けない。

研究日記

テクニシャンとして採用が決まった女の子がラボを訪ねてきたので、軽く雑談。勤務開始は 4月からだが、それまではアルバイトとして、月に数回働いてくれることになるという。

最近は Windows に付属のマインスイーパに凝っている。パソコンに接続された測定機器が立ち上がるのに数分を要するのだが、その間のヒマ潰しである。ハイ・スコアが出るたびに研究センター長の名前を入力しているのは秘密だ。

2005/10/25/Tue.

日本シリーズ、阪神の 3連敗に立腹の T です。こんばんは。

プレーオフだか何だか知らないが、ロッテってパ・リーグの 2位だろ、2位。そんなチームに負けるなよ。「実力のパ」というが、それにしても不甲斐ない。

研究日記

「ミスるかも」と懸念していたコスミド・マップ様の実験計画。案の定、トチってしまった。フロー・サイトメトリーにかけるはずの細胞から RNA を取ってしまう。危惧はしていたが、もちろん予定はしていない。これからも n を稼ぐつもりだから、次回に回せば良いのだけど、今回ミスってしまったということは、次回もその可能性があるということ。容量オーバーなのかもしれない。事実、終わったのは 22時。時計を振り返ったらそんな時間だった、という感じである。体感時間が短いのは救いだが。

その後、先生と会食。議題は新しいテクニシャンの採否。実際に一緒に働いてみなければわからん、というのが本音である。雇われる側だけでなく、迎える側もおっかなビックリ、という一面は確かにある。普通の企業であればまた違うのかもしれないが、研究室というのは家族的な小企業に似ている。親密な点もあれば、ドロドロしている点もある。それは規模の性格上、仕方がない。良き出会いであることを願うばかりである。

2005/10/24/Mon.

便座の暖房を ON にした T です。こんばんは。

研究日記

月曜恒例のセミナー。実験が長引いて参加できず。セミナー終了後、ラボの留学生の追いコン。日付が変わってから帰宅。携帯電話を職場に忘れる。目覚まし時計も兼ねているので、明日は起きられるか不安。

2005/10/23/Sun.

通勤時、電車に乗り合わせた人間の 8割以上が競馬新聞を読んでいたことに驚いた T です。こんばんは。

今日は京都競馬場で菊花賞が開催されていたのだ。目玉はもちろん、史上 2頭目の無敗 3冠を目指すディープインパクト & 武豊。単勝倍率 1.00倍(!)のディープインパクトは、2位に 2馬身差を付けて優勝した。競馬に興味はない俺だが、何とも心躍るニュースではないか。

それに比べて日本シリーズの阪神は……。

研究日記

午後からラボへ。テクニシャンを増やすという話があったが、今日が面接日なのである。何を間違ったか、俺も面接員の 1人として末席を汚すことに。応募してきたのは 3人。いずれも俺より年若の女性(というよりも「女の子」というべき印象)である。採用されるのは 1人。

不思議な感覚である。半年前、彼女達の席には俺が座っていたのではなかったか。「誰を採用するか」ではなく、「求職者としての彼女達」という視点に、俺はついつい捕らわれてしまう。

とまれ、面接の裏側を垣間見得たのは収穫だった。転職の機会があれば参考にさせて頂こう。

Web 日記

手書きの日記帳には必ずある天気欄だが、何故か web 上の日記ではそれほど浸透していない。天気というのは日にちを思い出すのに有用な要素であって、「そういえばこの日は雨が降っていたなあ」などといった具合に記憶を補佐する。日記の「記録」という側面を考えるならば、存在して損はない項目である。

例えば、プルダウン・メニューから選ぶだけで自動的に天気を挿入してくれるようなスクリプトを組むのは難しくない。時間ができたら試してみたい。忘れないように、ここに書いておく。

2005/10/22/Sat.

ふぐカレーなるものを食べている T です。こんばんは。

洗濯をしてから部屋を念入りに掃除する。本棚を作ったせいか、やたらと埃っぽい。朝の課業が終わったら外出。Yシャツなどをクリーニング屋に放り込むついでに、いまだ買っていなかった書斎のカーテンを手に入れる。最近は朝が寒いから、というのがその理由。まことに文化的でない。男の一人暮らしだから、覗かれても恥ずかしくないんだけどね(そんな生活自体が恥ずかしい、という話もある)。

研究日記

午後からラボへ。先日、さる女性と交わした休日出勤に関する会話をどうぞ。

女「毎週土日も大変ですね」
俺「まァ独身時代にしかできないことだし、今の内に経験しておくのも良いんじゃね?」
女「そんなことをしている男が独身のままとなるのです」

面白いよなあ。完全に発想が逆である。そして多分、彼女の方が正しい。非常に女性らしい考え方だと思う(皮肉ではなく)。

「テクニシャンと研究員」でも少し休日出勤に触れたが、俺は何も休日出勤がエラいとは思っていない。「土日も働かないと結果は出ない」という人もいるが、個人的には必ずしも賛成できない。ただ、扱っている生物種や組んでいる実験によっては、毎日出張っていかざるを得ない場合もある。培地を毎日交換する ES 細胞なんかはその典型例で、誰かが面倒を見なければ細胞は死ぬ。そういう状況下において、働くのを厭うほどには俺の覚悟やモチベーションは低くないという、それだけの話である。

ただ、「せっかく来たんだし、培地交換だけで帰るのもアレだから、何か実験をやっていくか」という、実に意地汚い仕事根性はまた別問題。こういう考え方をするのは、大抵男である。上述の彼女がユーモラスに批評しているのは、まさにこのことだろう。気を付けんとな。改める気はないけど。

2005/10/21/Fri.

「忙しい」とは言いたくない T です。こんばんは。

裾野が狭いと頂が低くなる。これまでにも、俺は自分が興味を持ったものに対しては、独学で体当たりしてきたつもりである。身に付いたものも、身に付かなかったものもある。これまではそれで良かったし、独学も面白おかしくやってきた。しかし、少しは「効率」というものを考えねばならんかなあ、とも思い始めている。

理由は 2つある。1つは、好きなことに割り当てられる時間が激減したということ。1つは、頂きの高さが自分の仕事、つまり給料に換算されるものになってしまったということ。例えば、これまでは読みたい本を買ってきて興味の赴くままに読破しておれば良かった。ところが、もうそんな贅沢はできないのである。1年間に読めるであろう本の数を計算したとき、今の俺は何を読むべきか選択せざるを得ない。生活のあらゆる局面で、このような選択肢を無数に突きつけられているというのが、最近の実感である。1日 24時間、何にどれくらい使うか。「時間を売りたい」などとホザいていた大学生の頃が懐かしい。

この日記もそうなんだよね。日記を書くという行為は、もはや俺の生活に欠くべからざる要素となって久しいが、存在形態については一考の余地があるのではないか。「今日は何々をした」ということを書くためだけに 30分なら 30分の時間を使うということ、そのコストとリターンを計ってみる時期に差しかかっているのかもしれない。

一方で、このような考え方が貧乏臭いことも理解している。今週は、無駄な時間のリストラについて考えてみたい。

2005/10/20/Thu.

書斎に知性をプラスしたいという邪(よこしま)な考えを巡らしている T です。こんばんは。

書斎日記

これ以上本棚に文庫本を追加しても、intelligence の appeal には大して contribution がない。ここは少し毛色の違ったものを置いてみるのが effective だろう。考えた挙げ句、洒落た magazine rack に journal を display してみては、というまことに軽薄な idea を思い付く。何が good かを serious に thinking。Nature なんてどうだろう。しかしド真ん中すぎる気もする。ここはもう一つひねって、Nature Medicine あたりにしてみるか。Sister journal ってところが so cool。

で、半ば本気になって購読金額を調べてみた。Nature 本誌が 1年間で 48,960円(学生 33,080円)、Nature Medicine はもう少し安くて、1年間 28,870円(学生 20,370円)。新聞を取ったつもりで、Nature Medicine を個人的に購読するのも悪くない、と思えてくる。毎号毎号、読まぬ内に次の号が送られてきそうだが。まァ、届くだけで頭が良くなったように錯覚できる Z会みたいなもんだ(違うか)。

2005/10/19/Wed.

モダン焼き定食を食った後、摂取したのが炭水化物ばかりであったことに気付いてしまった T です。こんばんは。

今月先月と、缶モノのアルコール飲料が色々と出ている。週に 2回くらいはコンビニでそれらを買って帰るのだけど、行くたびに違うアルコールが飲めて、なかなかに楽しい。どれも結構美味しかったりする。

ファイル名の付け方

パソコンのファイル名の話を書く。極めて個人的なことだが、俺はほぼ全てのファイル名を英語にしている。日本語のファイル名を付けることに、どうも抵抗がある。気持ち悪いのだ。英語で書くとなると、単語間を何らかの形で区切らないといけないのだが、半角スペースも使わない。「Experiment Report '05/10/19」なんてありえない。「Experiment_Report_20051019」というふうにする。

つまらないこだわりである。今日び、半角スペースや日本語をファイル名に使ったくらいでバグが発生するパソコンなんてない。でも、生理的に受け付けられないんだよな。メールで日本語名のファイルが添付されていたりするとイヤな予感がする。開いてみると、案の定、半角カタカナや全角英数字が踊り狂っていてゲッソリする。まァ、ここまでは趣味の範囲である。しかし問題は根深い。

日本語をそのままローマ字にしているファイルもよく見かける。特に web ページに多い。Web サイトの多くはレンタル・サーバにファイルをアップロードして公開する。サーバでは日本語のファイル名は使えない。そこで半角英数字を使わなければならなくなるのだが、何を血迷ったか、「rinku.html」などというファイル名を付ける。オマエは本当に我が国の義務教育を受けたのか。小一時間問い詰めたい。試しに「rinku.html」で Google を検索してみたところ、実に 47,500件ものページがヒットした。日本の将来は暗い。

ジャーゴンと秘教性

さらにどうでも良い話を書く。俺は「-gue」という綴りが好きである。「prologue」「homologue」などだな。最近では「-gue」を「-g」と表記することも多いようだが、俺は反対である。確かに「-gue」という表記は発音と一致しない。しかし、だからこそ良いんじゃないか。「-gue」という単語は、何となく学術的な薫りがする。それは、発音しない文字が何故かくっついているという、秘教めいた雰囲気に原因があるのではないか。それがジャーゴンの愉悦なのである。呪文は、意味がわからないからこそ魅力と威力を持つ。使う者に選民意識を持たせない用語なんてクソ喰らえだ。常用語の使用を拒否することによって、我々は日常から遊離する。そこから生まれてくるものもあるだろう。

始めに言葉ありき。言葉は神なりき。

2005/10/18/Tue.

コスミドを使ったことがない T です。こんばんは。

研究日記

培養細胞のディッシュが 100枚くらいある。これが多いのか少ないのか、細胞培養の経験が今の職場でしかないので判断できない。単に維持するだけなら何ということもないのだが、我々がやっていることはもう少し複雑である。複数の細胞種を複数枚ずつ複数のシリーズとして、タイムコースを追う。そういう実験をしている。「どれそれのディッシュは何日目にあれこれして何日後にどうこうする」といったスケジュールが、入れ子状に走っている。これを Excel で一覧表にしてみたら、何かに似ていた。コスミド・マップである。こんなやつね。

コスミド・マップ

ミスりそう。

2005/10/17/Mon.

完全版「ドラゴンボール」が欲しい T です。こんばんは。

SDS-PAGE をしている途中に「天下一武闘会事務局」という単語が唐突に脳裏を去来する。それ以後、どうしてもその言葉が頭を離れず、「はい、こちらは天下一武闘会事務局です。参戦希望の方は 1番を、天下一武闘会についてのお問い合わせの方は 2番を押して下さい」という電話受付や、「ピッコロによって破壊された天下一武闘会場を呆然と眺める事務局員達」といった、筆舌に尽くしがたいバカバカしさを誇る連想が止まらない。疲れているのだろうか。仕事が早く終わったので、20時頃に職場を後にする。

帰宅して酒を呑む。右肩が痛む。調子の悪いときは、缶ビール 1本で肩が上がらなくなる。2年程前から自覚している症状である。原因不明。今日はそれほどでもないが、痛いことには変わりないので、さっさと寝ることにする。

2005/10/16/Sun.

積年の理想としていた書斎にだいぶ近付いた T です。こんばんは。

書斎日記

昨夜、組み上げた本棚に書物を詰めていて重大なことに気付いた。

本棚、足りず。

書斎

とりあえずゴルゴ13 を天井に避難させて誤魔化した。今年いっぱいは大丈夫だと思う。多分。判型の大きいものは、反対側の壁面に 三段ボックスを山積みして放り込んでいる。こちらも結構キテいるのだが、ボックスは 1000円程度でいくらでも手に入る。また買ってこよう。こっちが天井に届くのも時間の問題だろうなあ。

ただいま午前11時。昼飯を食ったら出勤予定。ほとんど家にいないのに書斎が必要なのかという話もあるが、家にいる時間が短いからこそ、その場における集中力・生産性をできるだけ高めなければならないという発想もある。快適に知的活動を行える環境を築いておかないと、本当に帰宅したら寝るだけの生活になりそうで、それが怖い。

2005/10/15/Sat.

以前から、研究という仕事に対する世間の認知の低さに問題意識を持っている T です。こんばんは。

機会があるたびに、この日記でも「研究とは」という形で、若干外側から眺めたような文章を書いている。俺ごときには荷が重いが、そのような情報は意外に少ないので、何らかの意義はあるだろうと思っている。ニッチな立ち位置で、これからも潜在的な需要に応えていく所存である。こういうのって、いずれ良い形で自分にも跳ね返ってくると思うんだよな。

テクニシャンと研究員

「テクニシャンと研究員は具体的に何が違うのか」という質問を頂いた。確かに、他分野の方にはよくわからないだろうなあ。俺もよくわからんのだから。俺が見聞したラボの数なんてたかが知れている。しかも話で聞く限り、ラボの人員の仕事や待遇は、各研究室によってだいぶん異なる。したがって、以下に書くことは俺の独断と偏見である。

まず、「テクニシャンと研究員は具体的に何が違うのか」という質問に一言で答えるならば、

ということになる(我が職場の場合)。例えば今日でもそうなんだけど、土日にラボに来て仕事をしている人は、俺を含めて研究員の方々のみである。テクニシャンは休日に来ないし、雇い主も働かそうとしない。肝心なのは、この差異が雇用形態によるものではない、ということだ。正規採用のテクニシャンもいるし、派遣の研究員もいる。派遣だから時間通りに帰る、正社員だから残業・休日出勤あり、というような、普通の会社の感覚とは少し違う。

だからむしろ、問題になるのは本人の意識の方であるといえる。採用されたときの身分がテクニシャンか研究員かなんてのは、あまり関係ない。スタート時点での待遇は違うかもしれないが、まともなラボであれば、実力のあるテクニシャンを研究員にするという例はゴマンとあるし、逆に無能な研究員はすぐに馘首される。そういう意味では完全な実力主義である。だが一方で、学問の世界でもあるから、矛盾するようだが学歴社会でもあるんだな。修士卒の俺など結構微妙なところで、まァ色々とあるわけよ。

閑話休題。最初の質問に戻るならば、テクニシャンと研究員の違いは、「俺はテクニシャンだから」「俺は研究員だから」という自己意識の持ち方の違いである、としか答えようがない。そのような意識の持ち方が、「だから勤務時間が終われば帰宅する」「だから休日も実験する」という、実際の行動の違いとなって現れる(断っておくが、俺はそのような自己規定の仕方を肯定も否定もしない)。ゆえに俺個人としては、「自分は研究員である」という強い意識をもっている人が、仮に書類上はテクニシャンであったとしても、彼は立派な研究員ではないかと思う(ここでも誤解のないように付け足すが、研究員がテクニシャンよりも立派であるなんていう主張をしているのではない)。

最も根源的なものは、一生研究で飯を食っていく気があるかどうか、だろうな。そのようなモチベーションのある人は、自発的に研究員たらんとするし、そのためには社会的に研究員であることに固執するし、そうするためには学歴と業績を整えねばならんし、そうしようと思えば、やはり研究員という意識を持って仕事を進めざるを得ない。ということで、環が閉じる。彼らの多くが非常に熱心に仕事をするのは、手段と目的が自己完結した強烈な意志を持っているからであろう。

したがって俺も、安穏と仕事に埋没するばかりではなく、来年度中には新たな動きを展開しようと今から画策しているのだが、それはまた別の話。

書斎日記

午前中にお届け、のはずの本棚が来たのは 12時過ぎ。中身を検分する時間もなくラボへ。大量の細胞を仕込んで、そのまま先生と焼肉屋で夕食。帰宅してからようやく本棚の梱包を解いて組立にかかる。3つともなると、かなりしんどい。休日なしの週末にはこたえる肉体労働であったが、それだけの価値はあった。見よ、この書斎ぶりを。

書斎

これからこの膨大な空間に本を詰めるのか……。ゲッソリするな。明日の夜には完成した書斎の写真をアップしたい。できるだろうか。明日も実験なんだよなあ。

2005/10/14/Fri.

今朝は 1時間半ほど寝過ごした T です。こんばんは。

それだけ寝過ごしても余裕で間に合うところがおかしい、という噂もある。少し出勤時間を見直した方が良いかもしれない。

書斎日記

明日の午前中に、いよいよ本棚が来る。計画していた書斎化を迅速に進めるため、職場でコッソリと「Book List」を印刷。78ページにもなってしまった。デフォルトのフォントでか過ぎ > Windows。明日も午後からガッツリ実験を組んでいるので、寝るまでに本棚が組み上げられれば良いかな、と。

本棚は単に書物を収納する空間にあらず。整然と秩序立てて整頓し、目的の文物を即座に取り出せるようにしておかなければならない。人間は忘れる。全ての本の内容を細大漏らさず暗記するなど不可能である。人間の記憶力の限界を補完するのが、本の役目なのだ。例えば、広辞苑の存在を知っているということは、広辞苑に記載されている全ての事柄を知っていることに等しい。記憶との違いといえば、目的の項目を引くのに十数秒の時間が必要になるという程度である。だから俺は本棚の整理に執心するし、目録の作成も厭わない。書斎を整えるというのは、自分の頭を整理することに似ている。

2005/10/13/Thu.

久し振りにラボで昼飯を食った T です。こんばんは。

大抵、昼飯は独りで外食。電話から逃れるため、というのが理由。先生の発注は全て俺が処理しているのだが、納期がいつだとか値段がどうだとか、そういう電話が必ず昼にかかってくる。口をモゴモゴさせながら電話に出たくないし、立ったり座ったりしながら飯を食いたくもない。第一、それでは昼「休み」にならない。で、外に食いに出る。安らぎを金で買っているわけよ。切ないねえ。

コケ日記

帰宅したら、まずコケに水をやる。霧吹きなどで湿らせると良いらしいが、水を吹きつけるほど沢山のコケを栽培しているわけではない。結局、実験室から失敬してきたプラスチックのスポイトで、ポタポタと水滴を垂らしている。「今日はこんなことがあってさあ」とか語りかけながら……という境地にまでは至っていないが、それも時間の問題なような気がする。ヤバいかも。

研究日記

ウエスタンを行う。これまたトラブルの末、なのだが、最後にはバンドを検出できた。やれやれ。これでようやく一通りの分子生物学実験が稼働するようになった。大変だったが、良い勉強にはなった。

来週からは大量に培養した細胞を、ひたすらフローサイトメトリー or ウエスタン or RT-PCR という予定。これまでのセットアップが生かされるときが来た。大丈夫だろうな。

2005/10/12/Wed.

金儲けがしたいわけではない T です。こんばんは。

金が欲しかったら、誰が研究なんて仕事をするかっつうの。

研究日記

給料のトラブルとかいってマジでウザい。俺はただ、何の憂いもなく仕事に打ち込みたいだけなんだよね。怒るのもバカバカしい。怒ると人間の価値が下がるからなあ。こんな端金で自分の値段は下げたくない。別に俺が何かを要求しているわけではないのだ。向こうが「出す」といったものが、「ゴメン、出なかった」という話。ちゃんとせえよ。俺が言いたいのはそれだけ。何だかなあ。

コケを眺めて癒された。寝る!

2005/10/11/Tue.

コケの世話を始めた T です。こんばんは。

コケ日記

日曜日に、気になっていたコケを買ってきた。焼き物の皿と備長炭をあしらって、簡単なコケ・オブジェを造ってみる。

コケ

ああ癒される。こんな簡素なものに美を感じることのできる日本人で良かった。いや、俺のコケが美しいというつもりではないんだけど。

とりあえず習作ということでシンプルなものにしてみたが、買ってきたコケはまだまだある。いずれ他の植物や小物も取り入れて、色々とアレンジを楽しみたい。盆栽の雑誌でも読んでみようかな。

研究日記

ウエスタンの立ち上げ。今日は SDS-PAGE をやって、タンパク質をメンブレンにトランスファーするところまで。トラブルがなかったわけではないが、Ponceau でバンドが綺麗に染まるところまでは漕ぎ着けた。

近々、もう 1人テクニシャンを雇おうという話が出ている。既に募集はかけていて、履歴書も集まっている。届いた履歴書のコピーを手渡され、誰が良いだろうかという相談を先生とする。不思議な気分だ。半年前まで、まさに俺は履歴書を書き散らしていた身分だった。変われば変わるものである。いまだ自分の苦労が生々しく記憶に残っているだけあって、とてもじゃないが誰かを選ぶなんて作業はできない。ま、俺の意見は参考程度であろうから、そんなに深刻になる必要もないけれど。こんな仕事は、もっと年を食ってからで良い。

2005/10/08/Sat.

焼き鳥を食ってきた T です。こんばんは。

どうして天皇家は滅びなかったのか

どうして日本の権力者たちは天皇家を抹殺しなかったのか、というのは日本史上の大きな疑問である。今日は、一つの仮説的なヒントを思い付いたので書いておく。

ところで、家系の良い・悪いはどういう基準で判断できるであろうか。一つ確実にいえることは、本邦で最も家格が高いのは天皇家であり、2番目は出雲国造家であることだ。そして源平藤橘と続いていくのだが、要するに「良い家系」というのは、天皇家に近い家系ということになる。

例えば、徳川家康は「我が祖は新田義重である」と自称した。新田家は足利家、つまり室町幕府の兄筋にあたる。したがって、徳川家が足利家に代わって開幕するのは当然である、と家康は暗に主張したかったわけだ。ところが、こういう理論を持ち出すと、天皇家を滅ぼすなんてことは絶対にできなくなる。系図上の正統性を問題にする限り、その根源である天皇家の正統性を認めないわけにはいかない。「新田家は足利家の兄分であり、源氏の本家である」と主張すればするほど、源氏の本家である天皇家の絶対性は強まるのだ。

日本で家系を権威づける場合、いかに古くまで遡れるか、本家であるか分家であるか、というのが大問題になる。本質的にいえば、「いかに我家は天皇家に近いか」を争っているのである。そのようにして自己の家系を正当化すればするほど、天皇家に手が出せなくなる。天皇の御落胤を僭称した豊臣秀吉は、その最たる例だろう。我が朝の歴史は、そのようなパラドックスの繰り返しなのではないか。そんなことを考えた。

書斎日記

ネットの通信販売で本棚を注文した。ついにというか、ようやくというか。高さ 2 m × 幅 1 m の書棚を 3つ並べ、高さ 2 m × 幅 3 m の壁面を本で埋め尽くそうという計画である。届くのは来週末。1人で組み上げて整理するのにどれくらいの時間がかかるかわからないが、とにかくやっと書斎らしくできる。楽しみなことだ。

2005/10/07/Fri.

オッサン予備軍の T です。こんばんは。

電話をしなければならないときに限って、携帯電話の電池が切れる。仕方がないので、職場近くのコンビニで充電器を購入。1,800円程度と、少々高い。買う人は今日の俺のように切羽詰まった人間ばかりだろうから、そんな値段でも置いておけば売れるのだろうな。元を取るために、充電器を職場に据え置いて盗電を繰り返そうかと、セコいことを考える。1,800円の電気で、携帯電話が何回充電できるんだろう。真面目に計算すればスゴい回数になりそうだ。

9月から給料が上がったので、昇給祝い(?)に京都駅で天麩羅を食って帰る。異様にビールが旨い。こんなことで喜んでいる自分が滑稽でもあるが、楽しいときは楽しむべき、という気もする。こうした葛藤が失われたとき、男は真の「オッサン」へ変態するのだろうという予感もあるわけだが。ラク、なんだろうな。「早くこっちへ来い」と、無数のオッサンが手招きしている幻覚が……。

2005/10/06/Thu.

オートクレーブの中で寒天培地を固めてしまった T です。こんばんは。

もう一回オートクレーブしたら溶けたので、黙って培地を作ってみた。明日、大腸菌が生えていたら黙ったままにしておくつもりである。

研究日記

DNA の系がほぼ完全に機能するようになった。ベクターも幾つかクローニングできたしね。今週はボチボチと RNA やタンパク質の実験系を準備している。まずは濃度測定から。道程は長い。着実に片付けていきたい。

ボスから通達のあった学会の抄録だが、結局登録するハメに。といっても、全部先生に任せてしまったのだけれど。こんなんで良いのか。登録されてから、発表言語が英語であることを知る。これは俺に対する罠か、ボスよ。勉強しないとなあ。

ひょんなことから Dr. T の話で先生と盛り上がる。実は、今の実験で使っている細胞は、 Dr. T がおられたラボで樹立された細胞なのである。先生には先方と共著の論文もあるし、今回登録した学会の抄録にも先方のお名前が入っている。不思議な御縁である。俺はそんなことも知らずに今の職場に応募したのだった。運命なのか、単に世間が狭いだけなのか。

2005/10/05/Wed.

T です。こんばんは。

寝る!

2005/10/04/Tue.

ラムネ菓子を食っている T です。こんばんは。

たまに食うと旨いんだよな。1袋くらいならボリボリと食ってしまう。寝る!

2005/10/03/Mon.

細胞から RNA を抽出した T です。こんばんは。

実は、今まで RNA を直接扱ったことがなかったのだ。恥ずかしい。が、恥ずかしがってばかりもいられない。得られた RNA は RT-PCR に使う予定。早く覚えないとな。

研究日記

今日は主にデータ整理で、デスクワークが中心。たまにはこんな日も良かろう。夜からは月曜恒例のセミナー。その後の飲み会も想定の範囲内。特に今日は、我がラボが投稿していた論文が minor revision で acceptable という報せが届いためでたい日でもある。日付が変わってから帰宅。月曜早々に……という感覚も別にない。土日も出勤していたし。もう慣れてしまった。悪いことではないだろう、と思い込みたい 10月第1週のスタート。

過密なスケジュールが続いていたため、今週末の 3連休は完全オフにしよう、という合意が先生と俺の間で成立している。あと 4日踏ん張って、週末からはコケ栽培のプロジェクトを開始したい。良さげなコケが売られているところを見付けているのだ。素敵な鉢を探して、新たな同居人(同居植物?)を迎えるつもりである。「コケ日記」も書いてみようと考えているので、期待せずに見守って下さいますよう。

2005/10/02/Sun.

国勢調査に協力した T です。こんばんは。

国勢調査

国勢調査の書類を書く。調査書の冒頭に「鉛筆で記入しろ」と書いてあったが、我が家には鉛筆どころかシャーペンすらなかった(でもなぜか消しゴムはあった)。買うのもバカバカしいので、ボールペンで記入する。読み取れれば問題あるまい。

ところで、俺は以前からアンケート・ベースの統計調査というものに疑念を抱いている。主に得られた生データの信頼性に関する疑念であるが、それは以前にin enquetoという日記に書いた。今日話題にするのは、統計処理したデータの提示方法について、である。

新聞などでよく目にするのが、無作為抽出による電話アンケートや面接査問による、内閣あるいは政党の支持率調査である。n が明記されているのは当然としても、これまでに標準偏差や有意差を検定した記事を見たことがない。「前回とは調査方法が違うので単純には比較できないが、内閣支持率は 3.6ポイント上昇した」なんてのは、典型的な新聞記事である。アホか。調査方法くらい揃えろよ。それに、その「3.6ポイント」というのは有意なのか。p の値はいくらだ。誤差ってことはないのか?

調査された方々には申し訳ないが、こんな杜撰な統計(といえるかどうかも怪しい調査)には何の意味もない。紙とインクの無駄だからやめた方がよろしい。いい加減な統計(といえるかどうかも怪しい調査)によって、世論や政局が動く可能性も生じる。ハッキリいって、危険ですらある。やるならちゃんとやれ。無意味な数字を、さも意味があるかのように公表するのは、例え確信犯でなくとも立派な情報操作である。それは貴方達が最も嫌っているものではないのか > メディアの方々。

「僕たちメディア・エリートは統計なんて全然わかりましぇん!」というのなら、せめて生データを開示したらどうか。ネットを使えば簡単だろう。特に国勢調査なんかは税金を使っているわけだから、無料で生データを公表するのは義務ですらある。ネット上にはヒマで優秀な人が溢れているから、面白いデータの切り口を見せてくれる人が出てくると思うんだけどなあ。

研究日記

午後からラボへ。少し実験をしてから、大学におられた先生と合流。結果の再現性がイマイチだったので、それについてディスカッション。以前の実験に使ったのと同じ状態の細胞を用意すること、これは実験条件が微妙になればなるほど難しい。この点に関しては、個体といえども線虫の方が易しい気がする。

その後、軽く呑んでから帰宅。寝る!

2005/10/01/Sat.

諦めたら終わりだと思っている T です。こんばんは。

諦めたら今の仕事にもありつけていなかっただろうし。俺はこれで結構執念深い人間なのである。

阪神優勝セール

目覚めてから掃除と洗濯。姿勢を正してゴルゴ13 を精読。気合いが入ったところでラボへ。仕事が終わってから、阪神も優勝したことだし、給料も入ったことだし、何となく街中へ繰り出す。

阪神優勝の経済効果に少しでも貢献しようと思い、Joshin で 160 GB の外付けハードディスク・ドライブを購入。野球に興味のない方のために申し添えておくと、Joshin という電器屋は阪神タイガースの公式スポンサーである。縦じまのユニホームにも「Joshin」の文字が入っている。というわけで、阪神優勝セールにも力が入りまくりであった。

阪神優勝セール

写真は、商品を入れてくれた紙袋である。もちろん中身はハードディスクなのだが、どこをどう見てもそういう雰囲気ではない。これではただの虎キチである。俺は阪神ファンだからまだ良いが、阪神どころか野球に興味のない人にとっては大きな迷惑だったのではないか。これを持って電車に乗るのは、かなり恥ずかしい。お祭りらしくて楽しかったけれど。

老ける理由

そういえば昨日、職場のテクニシャン嬢に、「T はもっと年を食っているのだと思っていた」と言われた。実年齢よりも老けて見られるのは毎度のことだが、彼女がそういうふうに感じた理由というのが面白い。

「T は、何か色々と諦めている雰囲気がある」

静かな諦観に生きる男、か。格好良いじゃないか。キャッチフレーズにしようかな。