- 法螺とオーダー

2005/05/31/Tue.法螺とオーダー

法螺は嫌いではない T です。こんばんは。

昨夜受信した出会い系サイトのメールを読んでコーヒーを吹いた。登録している女性の数、実に 200万人という。笑わせるつもりか。

日本の人口が1億2000万人、その半分の 6,000万人が女性だとする。平均寿命を 75歳として、各年齢の人口は等しいと仮定する。出会い系の年齢層を 18〜32歳の 15年間と見積もると、この層の女性人口は全女性の 15/75 = 1/5、つまり 1,200万人である。先に紹介したメールの公称が事実だとすると、妙齢の女性の実に 6人に 1人が、この単一のサイトに登録していることになる。んなアホな。

オーダーと推測の妥当性

こんな計算をして、出会い系サイトの揚げ足を取りたいわけではない。オーダー(位数)の話をする。

自然科学の分野では、べらぼうに巨大な数字、あるいは小さい数字を扱うことも珍しくない。そのような極大・極小の世界では、あらかじめ得られる数値のオーダーを予測しておくことが重要になる。値が極端なだけに、観測誤差が大きくなることもある。そのとき、それが誤差なのか、実験のミスによるあり得ない値なのか、それとも妥当な値であるのか、そういった判断を行うのに、オーダーの見積もりは必須なのだ。

何かの本で読んだ話なのだが、アメリカのある高校(中学だったか)のテストで、次のような問題が出たという。

シカゴにいるピアノ調律師の人数を答えよ。

もちろん、正確な人数がわかるわけはない。出題者だって知らないだろう。しかし、「大体どれくらいか」という予想ならできる。「シカゴの人口がこれくらいだから」「ピアノのある家は、クラスに数人程度だったから」「調律の値段はこんなものだろう」「1年に 1、2回調律するとして」「1人の調律師が生活するには、これくらいのピアノを受け持ちが必要」というふうに推測を重ねていく。

この試験で問われているのは、推測の妥当性、言い換えるならば、妥当な推測をする能力である。一読して、これは良い問題だなあ、と感心したことを覚えている。日本でこんなテストをしたら、「いい加減な問題を出すな」と PTA に怒られるのではないか。

世の中には「公称」という奇妙な数字がある。いくら言を取り繕おうとも、「実数」と言明していないからには、どこかで粉飾がなされているはずなのだ。倍増くらいなら可愛いものだが、オーダーが一つ上がるとなると、眉に唾を付けた方が良い。しかし 2桁、3桁ともなると、開き直った爽やかさすら感じるなあ。嘘というか、法螺の領域。