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2004/09/13/Mon.iPapers

医学部付属図書館に行ってきた T です。こんばんは。

理系の論文とはいかなるものか、という問いを、義兄弟(文系)などから受けることがある。というわけで、「俺が論文を読むまで」の話を今日は書いてみた。長くなってしまったが、感じだけでも伝わればと思う。ついでに、以前から考えていた、ある提案も御紹介したい。

論文を探す

あくまで生命科学系の論文では、ということで御諒承願いたい。

論文の検索によく利用されるのが「PubMed」というサイトだ。例えば、「CeMyoD」という遺伝子についての論文を読みたいなら、ボックスに「CeMyoD」と打ち込んで検索する。すると、CeMyoDに関する論文がズラズラとリストアップされる。今日現在、「CeMyoD」による検索結果のトップに来る論文は、

Gaud A, Simon JM, Witzel T, Carre-Pierrat M, Wermuth CG, Segalat L.
Prednisone reduces muscle degeneration in dystrophin-deficient Caenorhabditis elegans.
Neuromuscul Disord. 2004 Jun;14(6):365-70.
PMID: 15145337 [PubMed - indexed for MEDLINE]

である。A. Gaud ら (Gaud et al.) が書いた、「Prednisone reduces muscle degeneration in dystrophin-deficient Caenorhabditis elegans」という論文は、2004年 6月に発行された Neuromuscular Disorders 誌の第14巻第6号の 365〜370頁に掲載されている、ということがわかる。最後の行は、この論文の PubMed における ID である。

著者名にはリンクが張ってある。クリックすると、その論文の abstract(要旨)のページにジャンプする。これで、その論文の中身が大体わかる。さて、abstract を読んでみて、この論文をじっくり読みたくなったとする。そのためには論文を手に入れなければならない。方法は大きく分けて二つあるが、まずはパソコンの前から立ち上がらずに済む方法を試してみよう。

論文をダウンロードする

PubMed の abstract のページには、著者名とタイトルの間にバナーがある。バナーにはリンクが張ってあり、クリックすると、その論文が掲載されている雑誌のサイトに飛ぶようになっている。雑誌サイトのほとんどが、PDF または TEXT ファイルでの論文ダウンロードサービスを行っている。わざわざ図書館に行かずとも、論文が読めるわけだ。

そのページ内に表示されているはずの、「Get PDF File」や「Download this article」というリンクをクリックすれば、論文がダウンロードできる……とは限らない。古い論文なら、無料で読める場合が多い。しかし、最新の論文はそうではない。大抵は、アカウントとパスワードを入力するページに飛ばされる。「持ってない奴は 30ドル払って登録しろ」とかいう文章も近くにあるはずだ。金がかかるのである。

考えれば当たり前だ。誰もが最新の論文をダウンロードできるようになれば、わざわざ雑誌を買って読む人間がいなくなる。それでは出版社が儲からない。というわけで、こういう仕組みになっているのだ。この画面が出てくるとお手上げである。論文を手に入れる二つ目の方法、図書館でのコピーに立ち上がるしかない。

(最新の論文でも自由にダウンロードできるという、素敵な雑誌もある。どういう理由で完全無料になっているのか知らないが、実に有り難い)

論文をコピーする

大学が購入している雑誌のほとんどは、大学図書館にある。論文が掲載されている雑誌の巻数をメモし、勇躍図書館に乗り込もう。図書館に雑誌があれば、後はコピーするだけだ。しかし、雑誌自体がないこともある。これは非常に困る。

ところで、我が大学は、医・歯学部が別キャンパスにある。これらの学部は資金が潤沢であり、それゆえ付属図書館の蔵書も充実している。我がキャンパスの図書館に雑誌がなかった場合、医学部キャンパスの付属図書館に遠征することになる。簡単な手続きさえすれば、容易にコピーを取らせてもらえる。

ところが、だ。医学部付属図書館にも雑誌がない、という事態に遭遇することもある。これ以上はどうしようもない。どうしても論文を読みたいなら、雑誌を購入している他大学の図書館から借りるか、諦めて雑誌を購読するしかない。しかし、たった1本の論文を読むだけにしては、これらの方法はあまりにも面倒臭くて効率が悪い。

論文を買う

そこで提案がある。雑誌を購読するまでもないが、掲載されている論文が読みたいとき、雑誌を売るのではなく、論文 1本の単位で小売りしてはくれまいか。

既にオンライン・ミュージック・ストアでは、そのようなスタイルが確立されている。アルバムを買わずとも、その中の好きな1曲だけを安価にダウンロード購入できるのだ。それを論文でも実現してほしい。論文のデジタル化はできている。後は金を払わせるシステムだけ。技術的に難しくはないだろう。

このシステム、アップルコンピュータの「iTunes」を真似て、「iPapers」なんていうのはどうだろう? 価格も同様に、論文1本99セントでどうだ! 俺なら喜んで買うね。読まない雑誌の年間定期購読を強要するより、小売り論文で薄利多売に徹する方が、よほど出版社も儲かると思うのだが。