- 青い芝生の酸っぱいブドウ

2004/08/09/Mon.青い芝生の酸っぱいブドウ

気が付けば、我が豪邸付近の駐車場から一斉に車が消え去っており、隣室にも階下にも人気がなく、嗚呼みんな帰省しておるのだなあ、と実感しながらゲームをしている T です。こんばんは。

近くにて思う

「ふるさとは遠きにありて思うもの、近くば寄って目にも見よ」とは、先日紹介した『天狗の落とし文』にも掲載されている、筒井康隆が好んで使うギャグであるが、俺にとっての「故郷」は決して「遠い」ものではない。ほとんどの親戚が市内に在住していたため、「帰省」なる行為を実行したのは、自分が大学生となり、下宿をし始めてからである。とはいえ、実家と大学は隣県同士。とても郷愁を誘うどころではない。

だから、自分にとって「帰省ラッシュ」や「田舎」という言葉は、どうもピンと来ない、どこか別世界の響きがするのである。「乗車率 160% の下り新幹線」なんてものが、本当に日本のどこかを走っているとは信じられない。お盆を前にすると、日本人全員がそんな列車に乗って、俺には想像もできない「田舎」を目指すというのは、実際の出来事ではなくて、誰かが作った寓話なんじゃないか。ほとんど都市伝説のノリ。日本伝説。そう思えるくらい、帰省には疎い。

遠くにて想う

疎いゆえの憧れというものが存在する。帰省ラッシュなんて、実際にはしんどいだけなのだろうが、それでも一度やってみたい、という気持ちが俺にはある。これは無知からくる憧憬であって、大抵は、実際に経験すると「もういい」となることはわかっている。

例えば、幸いにも俺は大病や大怪我をすることなく、二十数年間を生きてきた。バチあたりもいいところだが、それゆえに、不埒にも俺は「入院」なるものにも憧れていた(この憧れは、母の入院を目の当たりにして吹っ飛んだが)。こういう人は結構いるんじゃないかな。

ま、隣の芝生は青いってことで。実際には、「あのブドウは酸っぱい」と言っているキツネが一番賢かったりして。