常に冷静でありたいと思っている T です。こんばんは。
我が豪邸は山の中腹にあるから、家には坂を上って帰らなければならない。買い物の帰り、坂道を歩いていた俺を、自転車に乗った若い女性が追い抜いていった。何気なく見ていると、自転車を漕ぐのがキツくなったのか、どんどんと失速して、やがて止まってしまった。
自転車を降りたわけではない。ペダルを漕いだ姿勢のまま、ピタリと止まってしまったのである。か弱い女性のパワーと坂の重力が、ちょうど釣り合っている。ペダルの上で踏ん張っている状態であり、しかも女性はスカートをはいていたので、自転車から降りるに降りられない。何とか前進しようと、渾身の力でペダルを踏んでいるため、肩から腰から足から、全身がプルプルと震えている。
彼女には悪いが、おかしくってしょうがない。どうするのかと思っていたら、彼女は合理的な思考の持ち主らしく、なかなかスマートな解決策を見せてくれた。(答えは明日)
週末は散財したので、自炊することにした。メニューはさておき、今日は買い物の話。
要するに、毎日は自炊しない俺みたいな者が、ネットに何個も入っているようなタマネギを買っても意味がないということだ。使い切れないので、どうせ腐らせる。結局は割高なのだ。
ということにようやく気付き、今日は使い切れる量を買ってきた。正直、タマネギ 1個やニンジン 1本を買うのはバカバカしいのだが、その方が最終的に安上がりなので仕方がない。
井原西鶴だったか、こんな小噺がある。
「旦那、初ナスビが出てたんで買ってきやした。2個で 1文と、3個で 2文のがありやしたんで、3個で 2文の方を買ってきやした。こっちの方が得ですからね」
「バカをお言いでないよ。縁起物だから買うけれど、どうせ初ナスビは美味くないんだ。だったら、2個で 1文の方を買って、今度は残った 1文で初瓜が買えるだろう?」
なかなか味わい深い。「商人は損して得を取れ」などと言われるが、小噺の丁稚は、得して損を取っているのである。旦那の言うことはもっともだ。何も大量に安く買うだけが能じゃない。これからは「タマネギを 1個だけ」というような買い方を「西鶴買い」と名付けて、大いに広めたいと思う。