- 炬燵のはらわた

2003/10/21/Tue.炬燵のはらわた

さて、次はどんな夢を見るのか……などと呑気なことを書いていたが、物凄い夢を見てしまった。悪趣味な上に長いが、記念に書いておこう。

俺は数人の同志とともにどこかに立てこもっている。仲間は高校生くらいから中年まで、全員が男だ。立てこもるといっても全然緊迫した状況ではない。部屋は 8畳くらいの広さで、そのほとんどがベッドである。その目茶苦茶デカいベッドに男数人がごろごろしている。大半は眠っている。その他のスペースは大人数のキャンプで使うような、汚い革の巨大なバッグで占められている。であるから、印象としての部屋は狭い。

俺を含め、同志は皆ホモである。このとき起きていたのは俺ともう一人、同年代の男だけであった。皆が寝ているので、俺は退屈のあまり同志の荷物を覗いたりしている。俺が検分していた荷物の持ち主(中年)のことを「XXさんは『わだつみ会』の人だよ」と、起きている同志が教えてくれる。

この男と俺は今後の身の振り方を考えている。どうやら俺達は完全に包囲されているらしく、勝ち目は万が一にもないらしい。その割に男は「甲州の連中は降伏してくる者の取り扱いには慣れているから」などと楽観論を述べている。表に人の気配はない。

俺の隣に寝ているのは同志で最年少の高校生くらいの若者だ。短パン一丁で寝ている生白く細い身体の持ち主で、時代劇に出てくる小姓を思い出してもらえば大方間違いない。彼は俺達おっさんホモ集団のアイドル的存在なのだ。こいつが半睡状態で、ときどき寝言を言う様が非常に可愛い。愛しさが募った俺は、うつ伏せになっている彼の膝の裏を舐める。半覚醒状態の彼は「何だよ……」などとタメ口をこぼすのだが、もう1人の男が「何ですか、だろ」とたしなめると「すみません……」と寝ぼけながらも訂正するのもまた可愛い。

男が小姓に「ちょっと外に出て敵の一人でもトマブシに斬ってこい」と冗談めかして言った。

すると半裸の小姓が手近にあった日本刀を片手にガバッと起き上がり、部屋の戸(壁面いっぱいのガラス戸だったが、今の今までそれがあるとは気付かなかった)を全開にし、勢い良く表へと駆け出した。「あちゃあ」と俺は思った。ここから出ることは、俺達を包囲している敵の銃弾に身を晒すこと、すなわち死を意味する。しかし同志の死を目前にして俺には何の感慨も湧かない。一人くらい死んだ方が俺達が投降しやすくなるだろうと思っている。

表は砂利道で、20 m 先に 1軒の民家がある。民家の右側は竹薮になっており、そこに敵が潜んでいる。案に相違して銃声は聞こえなかった。たまたま見つからなかったのだろうか。小姓はこちらを向いている民家の玄関の陰に隠れる。そんな所に身を潜めても敵からは丸見えであり、彼が銃弾の餌食になるのは時間の問題と思われた。

ところが、彼の意識は民家の玄関の中に集中しているらしい。よく見ると、すりガラスになっている民家の玄関の戸の向こう側に白い人影が見える。どうやら敵はそこからも俺達の動静をうかがっていたらしい。小姓の注意はその人影に向いている。

ここにきて、ようやく俺は同志の言った「トマブシに斬る」という言葉の意味がわかった。それは「ふすま越し」のことで、この場合、小姓がガラス戸越しに人影を斬ることなのだ。ところが、意を決した小姓はガラス戸をガラリと開けてしまったのである。

玄関には白いシャツを着た小さな男の子がびっくりした顔で立っていた。

まさかそんな少年が、俺達の立てこもっていた近くにいるとは思ってもいなかった。付近の住民は退避し、ここにいるのは俺達と包囲している敵ばかりだと信じていた。

そして小姓は奇声を発しながら日本刀で少年を斬った。

少年は玄関の奥にぶっ倒れたようで、俺の視点からは見えなくなった。しかし、小姓がしつこく少年を斬りつけているであろうことは、彼が発し続ける奇声から容易に想像がついた。正気の沙汰ではない。離れているはずなのに、血生臭い音が絶え間なく聞こえてくる。気分が悪くなった。

俺はベッドの上で体勢を変え、民家の玄関が見えない位置に移動し、そこでガタガタと震える。その位置から玄関は見えなくなったが、手前の砂利道は見えていた。しばらくすると、その砂利道を少年の姉と思われる女の子が駆けてくる。しかしつまずいて転んでしまう。女の子は自分の肩越しに振り返る。

一瞬後、女の子の背後に現れた血まみれの小姓が容赦なく彼女に日本刀を振り下ろした。

小姓は何度も何度も斬りつける。狂っているとしか思えない。「オエっ」と自分がエヅく声で目が覚めた。

……何て悪趣味な夢なのだ。何でホモ?(しかも男の膝の裏を舐める俺!)それに「わだつみ会」に「甲州」って、時代は無茶苦茶やし。しかしそれでも前半はホノボノとした雰囲気が漂っていた。一転、後半はバリバリの惨殺劇である。あまりにもリアルで吐きそうになった。マジで。

炬燵、恐るべし。