- 自由死刑

2003/02/16/Sun.自由死刑

最近どうも更新が滞りがち。卒論書いてて文章には食傷気味なのか。せっかくここには何の検閲もないというのにね。たとえですよ、たとえ。

さて、ここ数日だらだらと時間をかけて読んでいた島田雅彦『自由死刑』を読破した。薄い文庫本なので、普通に読めば一晩仕事なのだが、どうにも先に先に読むのが勿体なく、久しぶりに熟読してしまった。

不勉強なことに、実は島田雅彦を読むのは『自由死刑』が初めてなのだが、いやあ、面白かった。自由死刑というのは自殺のこと。主人公は自殺を決意した30男なのだが、能動的に自殺を遂行するため、1週間の猶予を自分に与える。その 1週間で、この世に未練を残すことがないよう、やりたいことをやってしまおうというわけである。残っていた貯金が 100万円。

どうです? 設定を聞いただけで面白いとは思いませんか。まず考えるのが、自分だったらどうするか。それから、友人知人なら何をするだろう。とまあ、そんな考えを抱かせて物語は始まる。主人公は、まず酒池肉林の宴を繰り広げようとする。これは誰でも考えそうなことだ。ところが、まずは満足のいく宴を催した次の日、えらく体が疲労していて「酒池肉林には体力が必要なのだ」ということに気付く。

さて、次はどうするか。という具合に物語は進んでいく。主人公が何をするか、自殺は決行されるのか、どんな方法で、と興味は尽きない。さらに、作中で展開されるエピソードもよく練られたものばかり。そのうち話はどんどん破天荒になっていくのだが、主人公の周囲の人間が変な奴ばかりながら奇妙な実在感があって、読んでいて不思議な感じになっていくのがよろしい。

ま、あらすじを最後まで披露するのは無粋なのでやめておくが、傑作だと思いますよ。