- Diary 2002/11

2002/11/29/Fri.

「真・三国無双 2 猛将伝」
コーエーの大ヒット作「三国無双」最新作。三国志の登場人物となり、湧いて出てくる敵軍兵士を右から左へちぎっては投げ、ちぎっては投げ、八面六臂の大車輪、阿修羅もここに極まれり、という活躍をする。
「信長の野望・蒼天録」
コーエーの大ヒット作「信長の野望」最新作。戦国時代の大名となり、全国各地に群雄割拠する勢力を武力知略を駆使して攻略し、天下統一を果たす。「蒼天録」では、大名以外の武将でもプレーできるらしい。
「FFX-2」
スクウェアの大ヒット作「ファイナルファンタジー」最新作。前々作「FFX」のヒロインとなり、「FFX」後日の世界を探求するようだ。なお、スクウェアはエニックスと合併した。

最近、新しいゲームやってねえなあ。諸君はいかがかな?

昨日今日と、なんとなく早く帰ったりしているので、久しぶりにゲーム「真・三国無双 2 猛将伝」をやっている。ところが、以前は楽勝でクリアできていたステージに何度も何度も手間取るではないか。「真・三国無双 2 猛将伝」は、いわゆるアクションゲームなので、やり続けていなければ腕が落ちるのは確かなのだが、それにしてもひどすぎる。自分はしっかり防御できていると思っているのに実際にはできていなかったり、間合いが取れなかったり、いや、もうひどいのなんの。ボタンもろくに押せやしねえ。

筋肉のように、反射神経や運動ニューロンというやつも、使わなかったら段々と衰えていく一方なのか。哀しいなあ。ゲームの腕が落ちない RPG やシュミレーションの方が俺は好きなのだが、ここのところ良いタイトルが出ておらん。やりてえなあ。

今の楽しみは来年 1月に出る「信長の野望・蒼天録」と、3月に出る「FFX-2」だ。どちらのシリーズも最新作が出れば買うという長い付き合い。買う金とプレイする時間があるかどうかが不安だが。なに、どちらも、なければないでどうにかなるという代物だから心配ない。ああ、ゲームしてえ。

2002/11/28/Thu.

丸坊主にしてから 2ヶ月、実験の合間を縫い、ついに散髪をした。みんなも小綺麗にしているか?

俺が贔屓にしている散髪屋は下宿の近くにあって、「10分 1,000円」が売り文句。別に 10分以上かかっても 1,000円なのだが、つまりは 10分くらいで散髪を終えますよ、という意味。そんなだから、洗髪や髭剃りはない。そんなものは自分でも充分にできるから、まあ安上がりだ。

安上がりと言えば、坊主で髭を生やしていると、金がかからない。髭を剃らないから、剃刀やシェービングムースなんかは 3ヶ月以上の放置プレイだし、シャンプーも全く減らない。ま、その分、容貌から確実に何かが失われていきつつあるのは間違いないのだが。

実は、散髪屋の向かいが俺のバイト先だったスーバーで、知ってる人間が働いているものだから久しぶりに寄ってみた。みんな元気かなあ。こんな時間(15時)に店には来ないからわかるかなあ。おっ、店長だ。

店長「いらっしゃいませー(素)」

い、いかん、俺であることに気付いておらんではないか。おっ、精肉のおばはんだ。

おばはん「あらー、T君? どこの軍人さんかと思った」

ぐ、ぐぐぐ軍人さんて。まあええか、凛々しいという意味だろう、絶対。

というわけで機嫌が良くなり、天気も良いものだから家に立ち寄って、久々、実に3週間ぶりにバイクに乗って学校に舞い戻ることにした。エンジン腐ってへんやろなあ。おっ、ええ音させるやないけえ。こいつでブワッと、かっ飛ばすか。おりゃー。と出発したはいいが、

寒い。

あまりの寒さに涙がちょちょ切れ、しかも、風圧のためにその涙がこめかみに向かって一直線に流れていくという有様。そうなんだよなあ。寒くなるとこれがあるんだよなあ。ああ、日記書き終えたら帰るけど、やっぱ寒いんやろなあ。嫌やなあ。

2002/11/27/Wed.

SDS-PAGE
電気でもってゲル中にタンパク質を流し、タンパク質を大きさ別に分画する実験。
ソニケーション
超音波破砕と訳される。大腸菌などを超音波で破壊し、細胞内の各タンパク質を解離させること。

今日のタイトルはK先生の台詞から。諸君、何でも凝らないとダメって知ってたか?

最近、実験に凝っている。すでに結果はほとんど出ているのだが、学会発表用の良い写真を撮るための実験をしている。だから基本的に失敗することはないので、細かいところにこだわってできるのだ。と書くと聞こえが良いが、ほとんどが自己満足、それも重度のものである。

クローンごとに異なる大腸菌の生育速度を、希釈を駆使して等しくする。SDS-PAGE のゲルの大きさを寸分違わず同じにする。ソニケーション後の各サンプルの色合いを同一にする。などなどなど。ちょっと病的ではないかとも思うし、実は定量的な計測はしていない、という驚きの事実もある。アナクロな自己満足以外の何物でもないよなあ。まあ 1人で楽しんでいるだけだから。

もう一つ、凝りだしたら本当にキリがないのがフィギュア作りである。ヒゲマン氏と「フィギュア向上委員会」を設立してから、ベクター上の遺伝子を綺麗に描く、など様々な難問を解決してきたのだが、いまだもって良い案が浮かんでこないのが、鉛筆状の物体を描く(勿論ドローソフトですぞ)という課題。これが難しい。

俺も自分の結果はイケてるフィギュアで説明したいから、ちょっと凝ってみるかねえ。

2002/11/26/Tue.

マテメソ
マテリアル・アンド・メソッドの略。日本語では「実験材料及び方法」などと訳される。

今日はデスクワークが中心。しんどい。Death苦ワーク。なんてな。諸君、運動しているか?

サイトが現在の方式で更新され続けると、トップページが重たくなっていく一方であることにようやく気付いた。というわけで「Diary」というページを設け、トップには 2、3日分を残して、過去分をどんどん放り込んでいくことにした。

最近、時間があれば卒論をしこしこと書いている。俺の実験は、手法が前任者 Dr. T のそれと同じなので、マテメソを書くのは楽だ。楽なのはよいが、それに流されて、ほとんどパクリになってしまいそうになる。こんな場合にどうするかというと、「パクリじゃない、引用なの引用」という呪文を心の中で唱えることにしている。

最近、時間があれば来月の学会の準備をしている。俺の写真は、前に比べて相当綺麗になったとはいえ、まだ少し曖昧なところもある。あるのはよいが、それを直そうと、実験データを改竄してしまいそうになる。こんな場合にどうするかというと、「改竄じゃない、データ加工なの」という呪文を胸の奥で唱えることにしている。

いやあ、日本語って便利だなあ。

なんてことは決してせずに、極めて真面目に頑張っています。

2002/11/25/Mon.

早くも師走の足音が聞こえてくる。皆の衆、年は越せそうか?

毎年この季節になると 1ヶ月も前だってのにクリスマスクリスマスと痴呆のように騒ぎやがって馬鹿め。などと昨夜のニュースを見ながら毒づいていたのには理由がある。

俺って大学入ってからバイト先でしかクリスマスを過ごしたことがないのよ。

けっ、人がひいこら働いてるのに、やれケーキだシャンペンだ、おい兄ちゃんちょっとまけてくれや、クリスマスなんだからよう、ヤダ、あの人クリスマスなのにバイトなんかしてるわ……。

しかし、しかしだ。今年の俺はクリスマスと正月は働かんぞ! 何をして過ごすかと言えば、

タイでキャンプ。

少し長い話になる。俺は幼少のみぎりよりボーイスカウトをやっていたのだが、ボーイスカウトでは4年に一度、オリンピックみたいな感じで、世界中から少年が集まってキャンプをするというイベントがあるのだ。これに参加できる年代は中高生なのだが、このたび、俺は引率者としてついて行くことになったのだ。

引率者というと楽に聞こえそうだが、さにあらず。考えてみたまえ、遠い異国の地で 40人からの中高生を引き連れつつ外人とガチンコキャンプを 10日間するのだ。無論、観光などない。この準備に 1年ほど前から貴重な週末を費やしていたのだが、いよいよ本番が近づいてきた。この週末も会議があって、土曜日のセミナーは参加できません、とラボの人々に一々説明するのが面倒なのでここに書いた。ま、そういうわけで年末年始は日本におりません。あしからず。

さて、とりあえずサンタ死ねや。

サンタ

2002/11/22/Fri.

プログレ
プログレス・レポートの略。毎週金曜日の午前に開かれる実験結果中間報告会。隔週で自分の順番が回ってくる。
ホメオボックス遺伝子
動物の体は基本的に竹輪であるが、この竹輪を輪切り(体節)にして、それぞれに「ここは胸、ここからは脚を生やして……」などと機能や構造を決定し、体節の差別化に働く一連の遺伝子群。

みんなが 1人のために。この言葉は悪い意味にも使えますね。みなさん、協力し合ってますか?

今日はプログレを終えた後、予定通りに実験を片付けて早めに店じまい。今週は頑張って新記録を樹立した。5日間でオーバーレイ 3回、しかも全部成功。大幅に実験進んでバラ色の週末を堪能する予定。

この辛い1週間、朝は 10時前後にラボに現れ、帰りはいつも午前様。順調に進んでいるときは、それも苦にはならないのだが。などという強気も言ってみたいが、総じて良い 1週間だった。と思うことにしよう。こんな夜を慰めてくれたのが『TRICK』の文庫本。毎夜、1、2話ずつ読んでいたのだが、何せ酒を飲みながらだったので、あまり記憶に残っていない。勿体ねえなあ。

先日、B氏と来年のカレンダーを眺めながらの会話。カレンダーの絵柄は、ミッキーとミニーが白いペガサスにまたがっているという構図だ。

俺「ペガサスって、形態的にどうなんすか? 羽いれると脚が 6本あるんすけど、昆虫すか?」
B「いやあ、昆虫は胸部とか腹部とかにわかれてるからな、ペガサスは形態的に脊椎動物やろ」
俺「でも、脚が 6本ってことは、ホメオボックス遺伝子に変異でも起こってるんすか?」
B「羽が生えてるからな。鳥ホメオボックス持ってるで、コイツ」
俺「それが過剰発現してると」
B「多分ね」

何が「多分ね」や。アホか、両方とも。B氏との会話は、どちらもボケ倒して後に引かないので、延々とバカ話が続く。勿論、引いたら負け。こんなんしてるん俺らだけやで、ホンマ。

2002/11/21/Thu.

勝ってる間は打順を変えない。諸君、風向きはいかがかな?

ヒゲマン氏に CD を聞かせてもらった。GUITAR WOLF というバンドのアルバムだ。ヘビーなサウンド(特にギター)とボーカルの声がよい。俺もギターを弾く人間なので、ギターの善し悪しは一般人より理解できるつもりだ。「JET GENERATION」というアルバムなのだが、中でも『冷蔵庫ゼロ』という曲が笑える。

♪何にもありゃしねー /何にもありゃしねー
 何度開けてもやっぱり/何にもありゃしねー
 冷蔵庫、ゼロ!!

この歌詞の後で「ぎゅううううううううう〜ん」という感じの哀しげなギターの哭きが入る。これが雰囲気が出ていて相当おもろい。「何度開けてもやっぱり」ってアンタ、そりゃ何にもあらへんがな。

2002/11/20/Wed.

わかればわかるほど、わからないことが増える。諸君、好奇心は満たされているか?

徒然草に「絵難坊」の話がある。絵難坊というのは、どんなに見事に描かれた絵に対しても必ず難点を見付けてしまうという、絵画鑑賞の名人のことだ。

あるとき帝は、それは素晴らしい絵を二つ献上された。一つは貴族が犬の首に縄を付けて引っ張っているもので、貴族が渾身の力で引っ張っている様子、そして犬が連れて行かれまいとして必死に抗っている仕種が、まことに生き生きと描かれている。もう一つは、樵(きこり)が山中で大木に斧をふるっているもので、筋骨隆々の樵、半ばまで切り込みを入れられた大木の描写は、今にもコーン、コーンという音が聞こえてきそうなほどであった。

そこで帝は、この 2枚の絵を絵難坊に見せてみた。

帝「どうや、おんどれ、このスンゴイ絵にケチつけれるか?」
絵「まことに素晴らしい限りですが、いささか欠点がございます」
帝「おう、ほんなら、その欠点ちうのを言うてみい」
絵「まずは貴族の絵ですが、犬を力いっぱい引っ張っている割には綱がピンと張っていません。樵の絵の方は、大木の半ばまで斧を入れているのに、散らばっている木屑が少なすぎます。どちらも世にも希な名画ですが、いささかの欠点が惜しまれますなあ」

この後、話は「ほほう、さすが絵難坊よ」という具合に終わる。諸君、この絵難坊という人間をどう思われるか?

感想 A
どのように立派な仕事でも、見る目を持った冷静な第三者が見れば必ず欠点が現れてくる。従って、絵難坊のような人間の言うことはよく聞くべきだ。
感想 B
綱が張っていないのは、まさに貴族が引っ張ろうとする瞬間を捉えたのかもしれず、また、樵は几帳面な正確で、小マメに木屑を処理しているのかもしれない。大体において、人の仕事にケチをつけるのを職業としているとは何事か。それなら貴様が誰にも文句を言われぬ絵を描いてみろ。絵難坊のような人間の言うことを聞く必要などない。

ちなみに、今日の俺の気分は「感想 B」の方です。実験ってね、結果が出ても出なくても辛いよ。

2002/11/19/Tue.

実験結果が出た。滅茶苦茶に嬉しい。皆さん、仕事の具合はどうでっか?

オーバーレイ
タンパク質 A とタンパク質 B が結合するかどうかを確かめる実験の一つ。A を吸着させた膜を、B の溶液に浸す。それを洗浄した後、B を認識する薬品で検出する。A と B が結合するならば、膜上に B が存在するので検出ができるが、A と B が結合しないなら、B は洗い流されているので検出反応がない。

さて、リニューアルしたわけだが、その報告がまだだった。リニューアルの理由だが、単に「飽きた」というだけ。俺は何でもこまめにできない人間で、部屋の掃除もろくにせず、乱雑さが閾値を超えたらおもむろに模様替をして解決することにしている。前のサイトはデザインも見飽きたし、コンテンツもゴチャゴチャとしていて更新も面倒だった。やはり毎日触れるものはシンプルなのに限る。そんなわけで今回のリニューアルと相成った。

今日の実験だが、オーバーレイの新たな結果が出た。これで、どうやら研究しているタンパク質と相手方の結合に必須なアミノ酸を特定できたようだが、K先生が、また新たなアミノ酸置換をデザインせよと申された。もうええやろ? 研究が細かくなるのはいいが、どうも横道にそれていくような気がする。

ま、とりあえず来月の学会には余裕を持って臨めそうだし、卒論も書けるだろうから喜ばしいことだ。いずれK先生との戦いが始まるかも。でも、K先生は気分屋だから何も起こらないかも知れない。

2002/11/18/Mon.

2,000ヒットを記念にリニューアルした。皆さん、いかがお過ごしか?

先日、友人からその存在を聞かされていた演説家・鳥肌実の公式サイトを閲覧する機会に恵まれた。「演説家」という職業からして謎だが、今その不可思議なベールが剥がされる。友人から大体のこと(演説内容の凄まじさ、ステージパフォーマンスの過激さなど)を知らされていたので、少々のことでは驚かない覚悟はできていた。

YAHOO! で検索してみたが、ちゃんとカテゴリーに登録されている。順調な滑り出し。だが俺は、ここで早くも只ならぬ気配を感じ取っていた。彼の公式サイト、その名を、

「廃人の碑」

くっ、こんなことで動揺する俺と思うなよ。とりあえずトップページ。「廃人の碑」というシンプルなタイトルと「プラグインがありません」というダイアログが表示されるだけである。URLを見ると「torihada.com」とある。自らの名前を冠したドメインを取っているようだ。黒のバックに白文字、アクセントには赤色が使われている。どこかで見た色使いだと思って考えてみると、なんのことはない、右翼のそれである。

早速玄関へ。しかしここでもプラグインが必要らしい。無視してプロフィールと思われる「紹介」をクリック。鳥肌実と思われる中年男の写真が掲載されている。舞台衣装には全体にゴチャゴチャと文字が刺繍されているようだ。よく見ると「ニイタカヤマノボレ」などと書いてある。だが、マイクを手にした本人を見たところ、それほど危なそうでもない。だが、甘かった。プロフィール紹介の 1行目には、

「キチガイはひとりでいい……」

趣味の欄には「皇居に向かって敬礼」、職業は「自称、鳥の調教師(パン工場勤務)」。アホや、コイツ。腹筋が 256個に割れるくらいに笑った。他のコンテンツも見て回ったが、まあ、よくもこれだけ馬鹿馬鹿しいことを、というものが満載である。

友人の情報では、鳥肌実の演説の CD が販売されているらしい。是非とも手に入れなければならぬ。

2002/11/14/Thu.

B氏のひそみに倣い、秘密実験をスタート。とりあえず今日は下準備。とここまで書いたところでアップしようとしたらネットがダウン。復旧にえらい時間がかかりました。協力していただいた S先生、A氏に感謝。

2002/11/13/Wed.

パゲのゲルを作っていたのだが、最後にTEMEDを入れ、その蓋を閉めながら歩いていたら「おっ」と軽くつまづいたわけですよ。素早く体勢を立て直したのだが、辺りには異臭が。ちょっとだけだが TEMED をこぼしちまった! 急いで手を洗ったが、周囲は「臭い臭い」の大合唱。特に R女史なんかは、

俺「ほら、もう臭くないって」
R「いやああああ! 近寄らないで!!」

てな感じ。みなさん、試薬の蓋を開けたまま歩かないように。

2002/11/12/Tue.

トピックス準備の名を借りた休暇もどきな生活も、セミナー発表したことで終わり、明日から実験の日々。トピックスのプリントをコピーしに事務室に行ったら、お隣の S先生が先客コピー。S先生は「僕はいっぱいコピーするから先にどうぞ」と譲ってくれた。ありがたや。てな感じでもりもりコピーしてたら、S先生が不審な表情で俺を見る。何かと思えば、俺は S先生が差しっぱなしにしていた S先生のコピーカードでモッサモッサ印刷していたのだ。やっべ。と一瞬かなり焦ったが「これから気を付けてよ」とだけ言って S先生は去っていった。いやあ、すみませんでした。

2002/11/07/Thu.

来週の火曜日は、俺がセミナー発表の番だ。実験もせず、コピーしてきた論文を読む毎日。たまにやると楽しいが、今回は学会があったので準備期間が短いのが難だ。だってさ、いきなり目の前に計 50ページ以上の英語の論文を積まれて「1週間以内に読破・理解、そして説明せよ」って言われたも同然の状況。う〜む、ゲロ吐きそう。しかも本当に読みたい論文が載ってる号は図書館に来てないのよ。

2002/11/04/Mon.

最終日である。実は昨日から R女史が風邪でダウンしているのだが、今日も調子が悪いらしい。1日目から「寒い寒い」を連発していたが、昨日の午後についに撃沈。懇親会に一緒に行こうと思って電話したら寝込んでいたのだ。セッションが終わってからまた連絡することにしてN大へ。今日は全然関係のない、しかしちょっと聞いてみたい神経系に潜入。どれどれ、と参加してみたのだが……。わ、わかんねえ。頻出する単語が何を指してるのかすらわからん。投与した試薬かと思って聞いていたら電気刺激の名前だったりする。でも面白い話もあったし、さすがに神経系をビジュアル化すると絵的に映える。う〜ん、すげえな。なんて感心しているうちに終わってしまった。感心したが、恐らく得たものは皆無。

R女史に電話すると「今日は帰るかどうかわからない」とのことで、一人で帰ることに。新幹線に乗ったまではいいが、ごっつい込んでる。座れずにデッキで立っていたら赤ん坊を抱いた女性から声をかけられた。「この子のオシメを代えに行きたいんですけど、ベビーカーを見ていてもらえますか?」って、それくらいしてあげるがな、と安請け合いしたまでは良かったが、ドアに立てかけられたベビーカー、すぐに倒れそうになる。今まで女性の体で押さえていたのね、と納得してばかりはいられない。頼まれたからには倒れないように支えてあげねばならぬ。ただ、ベビーカーが微妙に遠い位置にあって手がつりそうになる。床には荷物が満開で近づくこともあたわず。はよ帰ってきてえな。と念じるものの天には届かず。延々 10分ほど待たされたとさ。

2002/11/03/Sun.

2日目、今日の目玉は何と言っても夜の懇親会だ。まずは筋収縮を制御するタンパク質の結晶化をされている R研H の T先生にアタックだ。この先生は気さくな方で、俺が Dr. T のことを話すと色々世間話をしてくれた。驚いたのがこの先生、今度研究室を移されるらしいのだが、その先が何とDr.Tと同じセンターだという。奇遇ですなあ、と言っておられたが、確かにそうですな。

次に捕まえたのが N大の I先生。先生は会場の端っこで、一人サンドイッチをもりもり食っていた。暇そうだったので話しかけてみる。

俺「どうもお久しぶりです」
I「もりもり。ああ君か。発表なかなか面白かったよ。もりもり」
俺「ありがとうございます。でも、結果をどう解釈するか難しくて」
I「もりもり。う〜ん、確かに。そんなときはじーっと結果を見続けるんですよ。そしたらパァーッと光明が来るもんですよ」
俺「なるほど。ところで先生のところの心筋型タンパク質ですが……?」
I「もりもり。あれも難しくてね。今、結果をじーっと見てるんだけど」
俺「ははあ。そういえば、うちの R女史がやっているアイソフォーム間での結合の違い、あれは先生、何かよい考えがありますか?」
I「もりもり。いやあ、僕もわかんなくてさあ。まあ、じーっと見てたら、そのうちパァーッと説明できる理屈が見つかるかもしれないよ」

先生は割と酔っておられるのではないか、と気付いたのは、煙草を吸うために会場の外に出たときである。草むらで何やら雑草を引っこ抜いているオッサンがいて、なんかうちの K先生と同じことしてるなあ、と思って見てたら I先生だった。

「いやあ、君か。なんか回っちゃってさ」と照れてる I先生は素敵。ちょっと誇張して書いたが、実り多いディスカッションだった。先生の「本当はじーっと見ているときが一番面白いんだよ」という言葉に感銘を受けた夜でした。

2002/11/02/Sat.

朝 6時の新幹線に乗るべく 5時起床。ま、線虫集会のときと同じですわな。でも 11月になるとさすがに暗いし寒い。つらつらと駅に向かっていたら R女史よりコールあり。

R「T君、タクシーの電話番号知らない?」
俺「タクシー? 駅までタクシーで行くの?」
R「暗くて怖いからタクシーに乗りたい」

う〜む、タクシーの電話番号なんて知らんぞ。仕方がないので学校まで迎えにいくことに。それにしても R女史、タクシー乗ったとしても時間ぎりぎりやで。「どうしてこんな早い時間に行くのか?」って今更言われても。それにアンタ、昨日俺が「この時間でええか?」って聞いたら「OK」言うたやんか。

ま、無事に新幹線に乗り込んで名古屋へ。地下鉄に乗り換え、ようやく着いたぜ N大学。ところが、ここで重大事実判明。なんと俺も R女史も学会の年会費は払っていたが学会参加費は振り込んでいなかったのだ。受付で「お名前がございません」と言われた日にゃあ、帰ろうかと思いましたよ。仕方なく現金で払って名札をもらい、筋肉分子のセッションへ。午前中は全部アクチンとミオシンの話だったが、はっきりいってアクチン・ミオシンは研究すること残ってんの、ってな状況だった。だって研究内容が、

「ミオシンを 1分子だけとってきてビーズを付けました」「アクチン繊維を数十マイクロメートル張って回転を計測しました」

そんなんどないしてすんの??? というのが正直な感想。これで午前は終わり。ところで、昼休みの間に企業のセミナーで弁当を配っていたのだが、これをK先生は虎視眈々と狙っていた。どれくらい本気だったかというと、案内図に大きく「lanch」と書くほど。勘弁してえや。

さて、午後からは筋収縮制御のセッションになる。一番最初は N大の I先生の研究室。研究しているタンパク質の心筋型のカルシウム結合測定だが、結合数は判明しておらず。残念。その次の次が俺の発表だったのだが、タンパク質の結合モデルに質問があって、しどろもどろに。だってアチラさんは結晶作って構造見てるんやで。素人が構造うんぬんを訊かれても答えられへんっちうに。面白かったのが「昨年の年会では……」って質問された人が言ったとき。わはははは。去年の今頃、俺はこの世に筋収縮制御タンパク質なんてものが存在することすら知らんかったわ。

晩飯は名古屋駅で K先生にみそかつを御馳走になる。ごっつぁん。

2002/11/01/Fri.

ようやく学会も終わり、俺は家でくつろいでいた。目の前のテレビは笑点をやっている。普段は客席の中で「今日はどこそこからお送りしています」と言うのは円楽の役目だが、今日はなぜかカツラをかぶった歌丸が任に当たっている。そのうちに大喜利が始まる。いつ見てもくだらねえ。だが、俺は学会が終わった気安さからクスクスと笑ってしまう。のどかな夕刻が過ぎていく。と、俺の携帯が鳴った。誰からと見る間もなく、俺は通話ボタンを押していた。

「もしもし、もしもし」

だが相手は返事をしない。しかもコール音は鳴りっぱなしだ。おかしい。通話状態のはずなのに。そのうち俺は、自分が布団の中にいることに気づいた。あれ? 座って笑点を見ていたはずだが? だが、テレビを見ると画面は消えている。

ここまできてようやく合点がいった。夢、だったのだ、と。つーか、まだ学会終わってへんし。ああ、それにしても夢に見る俺の幸せってのが、ただのんびりと笑点を見ること、とはなあ。哀しいぜ。