- Diary 2002/05

2002/05/31/Fri.

制限酵素を入れるため、アイスボックスに氷を満たしに低温室に行った帰り道。今日は B氏と 40サンプルのプラスミド処理という楽しい実験のため、いささか肩が凝った。運動がてらに肩を回す。負荷が少ないなと思ったので、アイスボックス(ひも付き)を手にしてぐるぐる回す。無論、氷は落ちない。おお、これこれ、やっぱ遠心力は偉大やのう。と思った瞬間、急激に負荷が消失。そんな俺の目前を、ひもがちぎれたアイスボックスが氷をばらまきながら 10 m ほどダイブ。廊下に氷の道を造る。遠心力、偉大すぎるがな。

もちろん即掃除。廊下が美しくなった。人のために良いことをするのは気持ちが良い。

2002/05/30/Thu.

実験の間隙を縫って、野外のコーヒー&煙草ブレイクに余念がない俺に、明らかに目つきが逝っている男が声をかけてきた。

男「ちょっといいですか?」
俺「……何?」
男「あなたは何のために生きていますか? そういうことを考えたことがありますか?」

うるせえ、こっちはベクター取るのに必死やねん! 考える前に手を動かせ、このボケ。っていうか、お前こそ何のために生きてんねん。アホが。と、突っ込みを入れたい衝動に駆られたが自制する。

2002/05/29/Wed.

ベクターを希釈せずにトランスフォーメーションする。コロニーいっぱいゲット。アホか。

B氏謹製の線虫クイズが披露される。全問3択なのに 35点。ほとんどランダムに選択したときの期待値ではないか。

2002/05/28/Tue.

セミナー発表と学会の要旨書きに忙殺される。久々のデスクワークな日々。セミナーの発表ではいつもアガってしまい、自分でも要領の悪い発表とは自覚しながら、頓珍漢な順番で発表する。B氏に「嘘言ってたで」と指摘される。限界ヨロシク!

2002/05/27/Mon.

セミナーの発表の用意で図書館にこもる。煙草を吸いに外に出たが、財布を図書館の中に置いてきてしまった。財布の中には学生証があり、それがないと図書館に入れない。仕方がないので、キセル入館する。

2002/05/25/Sat.

4回目のシーケンスはほぼ全読み。サンプルは一緒だから操作に問題があったのですな。とりあえず今回のシーケンスで現在作成中の6種類中の2種類のベクターをコンプリート。あと 4種類残っているが、どうなることやら。

2002/05/24/Fri.

大腸菌を植え継ごうと思い、バーナーに火を点けてスティックを滅菌したところで、プレートを用意していないことに気付く。横着して、椅子から立ち上がらずにプレートを取ろうとしたら、バーナーに頭を突っ込んで前髪を燃やす。

2002/05/23/Thu.

大腸菌をぼこぼこ増やして、がんがんベクターを取ってきては、ごりごりシーケンスして、求めるベクターを探す毎日。今日もベクターを精製してから電気泳動してみたところ、やたら薄い。なにが原因だったのか? フェノール処理? エタノール沈殿?

ところで、エタノール沈殿では、DNA 溶液に 99% エタノールと 3M NaOAc を加える。今日、B氏とともに、先日帰国した韓国人留学生Cさんの実験机から色々と試薬を物色していたのだが、その中に目にも鮮やかに「3M NaOAc」とラベリングされた瓶を発見。すかさずパクる。

ところが、それを後でよくよく見てみると、ラベルには「3M NaOC」の文字が! ナオックって何よ。これが原因やったんかなあ。

2002/05/22/Wed.

キャピラリーシーケンサーの講習を受講する。その簡単さに感嘆。ゲルシーケンサーを使う気がなくなるわ、あれを見ると。ところで今日、K先生が折しも帰宅しようとするところに鉢合わせ。俺を見つけたK先生は唐突に、

K「奥歯が生えるまでに生活リズムを作っておかないと」
俺「は? 奥歯?」
K「親知らずか。そのころまでにリズムを作っておかないと体がついていかなくなる。たまに崩すと体調も悪くなる」

どうやら俺がここ 2日休んでいたことを言っているようだ。とにかく俺は午後に来る人間として認知されている。そのことか。しかし、先週は毎朝 10時には来て先生に顔も見せているはずだが?

俺「先週は頑張って朝早く来たんすけどねえ」
K「だから慣れないことをすると知恵熱が出る

あれは知恵熱だったのか。

俺「はあ、これからも頑張って朝に来ます」

そう言うと K先生は満足そうだった。そういえば今日から俺の机が先生の部屋にお引っ越し。ちなみに、俺より前に、その引っ越しを勧められた R女史は断ったそうだ。

2002/05/19/Sun.

風邪で寝込む。

2002/05/18/Sat.

おお。きれいに読めてるのがあるじゃないっすか! とかいって、実際に読めているサンプルは1/2。着実にプログレス中(いいのか、それで)。

2002/05/17/Fri.

おお。きれいに読めてるのがあるじゃないっすか! とかいって、実際に読めているサンプルは 1/3。そのうち、一番綺麗な結果をプログレスレポートに載せる。ついでに別のサンプルも流す。結果はいかに。

2002/05/16/Thu.

シーケンスをやり直す。今度はコンタミの恐れから逃避するために、レーンを空けて流す。結果はいかに。

2002/05/15/Wed.

シーケンス結果はコンタミの嵐。なんか俺のサンプルの DNA に、ATGC 以外の見たこともない「N」っていう塩基がいっぱい混じってんのよね。ひょっとして新しいコドンか?

いくつかまともに読めているサンプルもあったけど、それに限って求めるミュータントが入ってないし。これもやり直しだな。

ところで、コロニー数が少ないサンプルに関して、時間もあるのでライゲーションをもう一度トライすることに。今回のベクター (なんと ver.4) は濃度も高く、フラグメントも濃縮したので、これで生えれば今までの敗因は濃度が低かったから、ということになる。これで生えなかったら、もうわからへんから、どうでもええわ。

2002/05/14/Tue.

ついに来ました DNA シーケンス。ちょっとかっこいいっしょ、DNA シーケンス。なんなら英語で書きましょうか、DNA sequence。しつこいか。

B氏のサンプル泳動に便乗して、俺も一緒にゲルシーケンス。結果は明日

2002/05/13/Mon.

夢を見た。って、唐突な始まりだが。というわけで、以下は夢の話。

ベクターにフラグメントが挿入されたかどうかを確かめるべく、俺は Eco RV で切断することにした。入っていたら大きい断片と小さい断片が、それぞれ一つずつ現れるはずである。ところが泳動して写真を撮ると、そこにはまるでラダーのような様々な長さの断片が!

すぐさま B氏に相談することに。

俺「なんでこんなにバラバラに切れちゃうんですか?」
B「え? これ、なんで切ったの?」
俺「Eco RVです」
B「ああ、EcoR V ってのは、EcoR の I から V まで全部切っちゃうんだよね」
俺「本当っすか!?」

本当のわけはないが、そこは夢のこと。俺は実験やり直しの悪夢にうなされ、そこで目が覚めた。起きたら、めっちゃ熱っぽいし。で、学校を休む。

2002/05/11/Sat.

結局、普通に RNAase 処理をしてから、透明なGLBで泳動したところ、きちんと断片が確認できた。実のところ、フラグメントが挿入されているかどうかは半信半疑だっただけに、相当嬉しい(大したことじゃないんだろうけど)。祝杯を挙げて寝る。

2002/05/10/Fri.

さて、今日はようやくゲットしたコロニーからプラスミドを取ってくるのだが、とりあえず B氏が見本を見せてくれたサンプルだけ大腸菌が増えていない。

気を取り直して、取ってきたベクターにフラグメントが挿入されているかを確かめるべく泳動する。が、泳動が終わり、写真を撮るためにゲルを引き上げようとしてゲルを割る。しかも割れ目はベクターの泳動位置と思しきラインを正確にトレース。とりあえずゲルを寄せて写真撮影。

撮影したところ、ゲルの割れは確認に影響がなかった。ベクターの入っていると思しきサンプルもちゃんとある。続いて、実際にフラグメントに入っている配列を認識する制限酵素で切ってみることに。前回も同様の確認を行ったのだが、今回は RNAase 処理をせずに、そのまま制限酵素処理をしたサンプルに、GLB + RNAase 混合溶液を加え、10分ほどおいてから泳動。が、断片現れず。どうして土曜のレポート発表前の実験はうまくいかないのだ。やむなく明日やり直すことに。

おまけ:14,000 rpm で回転中の遠心分離器の蓋を開ける。

2002/05/09/Thu.

コロニーついにゲット (2勝目)。数少ないが (Max 35)。

とりあえずプラスミド取るために液体培地で培養しようと、シングルコロニー(といっても数が少ないのでシングルじゃないコロニーがない)をピックアップする。俺は初心者ゆえの不安から、スティックに肉眼で見える量の大腸菌をなすりつけ、試験管の中で、見えてるものが見えなくなるまでスティックを振る。

それを隣で見ていた B氏が登場。

B「そこまでせんでも大腸菌は増えるよ」
俺「そうっすか?」
B「うん、こんなんで楽勝楽勝」

と言って、スティックでコロニーをプスッと刺し、試験管の液体培地の中でクリクリと動かすだけで、

B「終わり」
俺「そんなんで増えるんすか?」
B「うん、増える増える」

まあ、俺はそれでもなお不安なので、B氏の方法を採択せずに作業を進める。

そう、関係ないといえばないが、昨日のやけくそライゲーションでベクターを使い切ってしまっていたので作り直す。で、それを昨日からやっていて、今日は GENECLEAN II で回収したのだが、その最終ステップで、Glassmilk を TE に溶かし込むときに、俺は今までピペッティングしていたのだが、今回は B氏のすすめで、タッピングに変更。確認の泳動をした結果、見違えるほどの濃度に。ひょっとしたら、これが原因やったんかなあ、と

2002/05/08/Wed.

書くのも嫌だが、生えず。(3連敗)

やけくそのように、昨日ライゲーションしたベクターをトランスフォーメーションする。今回はライゲーション溶液全量をコンピテントセル 2本分に一気に導入という蛮行を決行。やけくそだから、コントロール、作らず。トランスフォーメーションしても、一気に濃縮して全量をただちにまく。やけくそだから。

やけくそついでに、この日は実験の後、7時間バイトを決行。午前 2時頃にようやく解放されて我が豪邸にたどり着くと、そこには B氏からのメールが。

「コロニー生えてるっぽい」

B氏のことゆえ、虚報の可能性に脅えつつも、複雑な気持ちで寝る。

2002/05/07/Tue.

ライゲーションはいつもトータル 10 ul でやっていて、そのうちトランスフォーメーションに 1〜2 ul 使うのだが、俺の不甲斐なさに業を煮やした K先生が登場。

K「生えないなあ。残っているライゲーション溶液を全量トランスフォーメーションしてみなさい。生えなくて元々だから
俺「大丈夫なんですか、それ?」
K「コンピテントセル (50 ul) はライゲーション溶液を全量 (10 ul) 入れてもぎりぎり大丈夫。なように調製されているはずだったと思うから、恐らく問題ない」

ということでチャレンジしたら、4本中 3本がショート。あとで S先生に聞いたところ、コンピテントセルに対して DNA 溶液は 1/10 以下とのこと。みんな覚えておこうね。

まあ、いいか。K先生が「時間がもったいない」と言われるので(実際その通りと痛感するばかりだが)さらにその勢いで別のサンプルのライゲーションも仕込んで帰る。

2002/05/06/Mon.

生えず。(2連敗)

2002/05/05/Sun.

前夜からライゲーションを仕込んだベクターをトランスフォーメーション。どうなることやら。

2002/05/04/Sat.

コロニーの出現はなく、ライゲーション失敗確定。なぜだ!

作り直したベクターでトライしてみたのに。それがいけなかったのか。ならばということで、ライゲーション初勝利時に使用したベクターでやり直してみることに。でもこのベクター、全部で 6個のコロニーしかできなかったんやけど。量を増やしてやったらええんか? ああ、もう、何が悪いのかわかんねえ!

ところで読者諸兄はお気付きですか? この日記が書かれているのがゴールデンウィークの真っ只中だということに。

2002/05/03/Fri.

昨日失敗した泳動をやり直したところ、かなり良い写真を撮ることができた。K先生に見てもらい、固い握手を交わす。

が、好事魔多し。昨日トランスフォーメーションした大腸菌がまた生えていない。コロニーっぽいものは見えるのだが、はたして。20時間くらい培養してんのになあ。そういえば前回(初勝利)のも生育が遅くて、結局二晩培養して、ようやく普通の大きさのコロニーになったし。なぜ遅い。

とりあえず、もう一晩培養してみることに。

2002/05/02/Thu.

ベクターにフラグメントが入ったかどうかを確かめるべく、フラグメントに入っている配列を認識する制限酵素で切ってみることに。約300 bp の断片が切り出されるはずだったが、泳動しすぎてバンドが広がり、結局わけのわからない結果に。好意的に見れば成功したかのようには見えはするのだが。とりあえず明日やり直し。

それとは別口に、またもやトランスフォーメーションをする。1 ml の培養液で培養して、そのうち 100 ul を撒いた後、残り 900 ul を 100 ul まで濃縮したやつも撒くわけ。で、遠心して大腸菌を落とした後、アスピレーターで培養液が 100 ul になるまで吸い取るのだが、並行してやっていたプラスミド抽出と同じように培養液を全部吸い取ってしまう。しかもそのことをプレートにまく段階まで疑問に思わず、いざ、とピペットマンを持った瞬間に途方に暮れる俺。

「どうやって撒くねん、これ」

大丈夫なんかなあ。せっかくフラグメントもベクターも作り直したのに。