本書は、十九世紀に二十代で不朽の業績を残した数学者たち六人の評伝である。なぜ十九世紀なのか。
よく知られているように、19 世紀は、自然科学の歴史では、特色のある時代である。(中略)『すべてのものを、根底にまで掘りさげて検討する』という精神が生まれ、数学においても、あらゆる分野において、「不安定な概念」から出発することを避けるようになった。(中略)これによって、数学は飛躍し、20 世紀への大きな遺産となって、われわれに伝えられたのである。
(「あとがき」)
採り上げられている「大数学者」は以下の通り。
「数学の話をするのが目的ではないので、業績の面では、ただ仄めかす程度にとどめておいた。そのかわりに、生涯については、わたしが、戦後四回のヨーロッパ旅行で集めた、確かな資料にもとづいて、できるだけ詳しく紹介しておいた」(「あとがき」)とあるように、それぞれの数学者の人生が活写されており、読み物として楽しめる。
ガウスの評伝はやや迫力に欠けるが(彼の魅力は「業績」の多彩さ、豊富さ、先見性にこそある)、悲惨であったガロアの境遇や、ヴァイエルシュトラスとソーニャ・コヴァレフスカヤとの間に交わされた心暖まる手紙などは読み応えがある。