- 『増補 日本経済新聞は信用できるか』東谷暁

2010/04/25/Sun.『増補 日本経済新聞は信用できるか』東谷暁

経済や金融に無縁の生活を送っていると、日本経済新聞に書かれていることは大体まともなのだろうという、漠然とした信頼を抱いてしまう。

とんでもない、というのが本書の主張である。具体的な例証については実際に読んでほしいが、例えば「日本型経営」に対するバブル前後の主張の変遷——まさに掌を返したような称賛から批判への変化——は、戦前戦後の新聞に見られた「戦争礼賛 → 軍部批判」といった転向を想起させる。

情報ソースの偏向、結論ありきの論調、何よりも主張に一貫性がなく、そのことに対する反省もない。日本経済新聞といえども日本型マスコミの一つであり、その他の新聞やテレビと同様の欠点を抱えていることがよくわかる。

日本経済新聞に対する、今思えば全く根拠のない私の幻想を、本書は見事に打ち砕いた。この幻想は、老人が「NHK は大丈夫だろう」と思ったり、科学に疎い人が「Nature の論文は間違いないだろう」と信じているのに似ている。ちょっと考えればわかりそうなものだが、思い込みというものは恐ろしい。

なぜ私は日本経済新聞に幻想を抱いていたのか。反省すべきはそこである。一つは、冒頭にも述べたが、経済に対する我が無知である。もう一つは、「日経平均株価」などに見られる「日本政府公認」的な性格である。これで目が曇っていた部分が大きいように思う。

私のような、経済に疎遠な人こそ読む価値がある本ではなかろうか。