- 『京都、オトナの修学旅行』赤瀬川原平/山下裕二

2008/11/07/Fri.『京都、オトナの修学旅行』赤瀬川原平/山下裕二

「日本美術応援団」団長の山下裕二と団員の赤瀬川原平が京都を巡る様子が、対談形式で記されている。日本美術応援団については、タイトルもそのまま、『日本美術応援団』(赤瀬川原平/山下裕二) に詳しい。

さて、なぜ「オトナの」「京都」なのか。

京都は巨大ブランドである。日本の古都、観光地としての最高ブランド。有名な寺が無数に点在していて、美術品にしても国宝がごろごろ、重要文化財がごろごろである。ブランドでいうと、町中いたるところにルイ・ヴィトン、エルメス、カルティエ、グッチ、プラダといった店の本店がぎっしり。だから日本人は当然群がる。となると、いわゆるミーハー気分の充満ということになるわけで、それにうんざりする人びとは多い。そのうんざりのあまり、京都の有名美術物件、歴史物件をはなから相手にしないということにもなっているんじゃないか。ぼく自身、金閣にしろ清水寺にしろ、桂離宮、平等院など、もろもろの存在はあまりにも有名で、記号的に知り過ぎていて、もうあえて見る必要はないと、漠然とそう思っていた。

でもよく考えたらそれは記号として知っているだけで、まだちゃんと見たことがない。これはちょっとまずいんじゃないか。まずいというよりもったいないんじゃないか。(略)

よし、じゃあひとつ、ここはミーハー気分を恐れずに突入して、分厚いミーハー気流を突き抜けた先で、京都の名品類に接してみよう、というのでこのオトナの修学旅行がはじまった。

(「まえがき」赤瀬川原平)

数年ではあるが俺も京都に住んでいるので、この気分はよくわかる。見ておかないともったいねえよなァと思いつつ、濁流の如き観光客と一緒に流されるのを潔しとしない気持ちもある。要するに単なるバカなのだが、そんな俺にとって「良いものがあるんだから虚心に見ておけ」という、本書の明瞭簡潔なメッセージは頼もしい。

紹介される行き先は、

それぞれの歴史的・文化的な知識については山下がフォローしており、赤瀬川独特の観賞と相まって非常に面白い。白黒ではあるが、各名所につき数葉の写真も付されている。京都に行きたくなる 1冊。