内容は題名の通り。各所で発表した澁澤龍彦の書評、書籍の推薦文や序文がまとめられている。採り上げられている書物は 100冊は超える。
外国文学、特にフランス文学および文学論・思想書が非常によく紹介されており、俺などはそちらの方面に全く暗いから、なるほどこのような豊饒な世界があるのだなァと、妙な安堵を覚えたりする。「これくらいは読んでおきたいものである」などと書いたりあったりして、これは非常に有名な作家、超絶の作品なのかと関心も湧くのだが、全ては澁澤の基準であるから鵜呑みにはできない。普通に考えれば、糞便やら錬金術やら性愛やら、そんな浮き世めいた事柄を狂的に論じ尽くした舶来の書物が広く読まれるわけがなかろう——。
で、そこにこそ本書の価値がある。「澁澤が紹介しなければ誰も採り上げない本」がたくさんある。本書は、本のセレクションに大きな価値がある書評集なのだ。もちろん、中身の紹介も簡にして要を得ている。澁澤と趣味を同じくする人には、格好のブック・ガイドにもなるだろう。