- 『文学賞メッタ斬り!』大森望/豊崎由美

2008/08/25/Mon.『文学賞メッタ斬り!』大森望/豊崎由美

大森望と豊崎由美の対談。本書の内容は「はじめに」で簡潔に紹介されている。

本書の主な目的は、無数の文学賞を明快かつわかりやすく分類整理することにある。どんな傾向のどんな賞で、過去にどんな受賞作を出し、読む価値があるのかないのか。

各賞の成立事情や選考過程はもちろん、選考の内幕や賞をめぐる文壇ゴシップやトラブル・喧嘩・騒動にも斬り込み、歴史の古さや賞金額だけでは判断できない賞の「格」や「権威」についても、歴代受賞作をもとに独断と偏見で判定した。「選評」を肴に選考委員を品評する一方、主要各賞最新受賞作を実際に読んで採点することで、文学賞ブックガイドとしての役割も持たせてある。

(大森望「はじめに」)

取り上げられる賞は、芥川賞のようなメジャーな賞から地方主催のマイナーな賞、エンターテイメントから純文学、新人賞から功労賞まで、多岐に渡る。それぞれの代表的な受賞作に対しては、寸評 (あるいは酷評) が交わされる。充実した脚注と併せて、読書案内としても役立つだろう。話者二人の読書量には、とにかく目を見張るばかりだ。

目玉であるゴシップ関連の話題にも事欠かない。特に「ROUND 4 選考委員と選評を斬る!」は爆笑ものである。有名な賞であっても選考は意外にいい加減なものだが、その実態が選考委員の選評に現れてくる。

大森 でも、今回大発見だったのは、津本陽先生の直木賞選評ですね。まるで清水義範が書いた文学賞ネタのパロディ小説かと思うような、超弩級のすばらしさ。例えば『プラナリア』(山本文緒 124回) が受賞したときの選評なんですが、津本先生いわく、

「プラナリア」は、五つの短篇である。内容はたいしたことではない。市井のゴミのような話である。

ありえないでしょう、これ (笑)。ふつう絶対書けない。

(「ROUND 4 選考委員と選評を斬る!」)

ゴミなのか。逆に読んでみたくなる。

本文で語られているのは日本の文学賞だが、コラムでは海外の文学賞についても触れられており、海外作品の愛好者も得るものがあるだろう。豊崎由美による「コラム 5 海外のおすすめ受賞作品」では、現代の海外作品が簡単な紹介を付されて大量にピック・アップされており、普段あまり翻訳物を読まない私も食指を動かされた。

文学賞を介して、いつもなら目にしないような作家、タイトルに出会えるかもしれない 1冊。