- 『火星田マチ子』吉田戦車

2008/01/07/Mon.『火星田マチ子』吉田戦車

なぜか地球にいる火星人の火星田マチ子は、恋の何たるかを知るために挑戦と失敗を繰り返す。

1話 4ページという分量で不条理な展開が繰り広げられるのだが、今読むとチョット苦しいなあ、というのが正直な感想だ (連載されていたのは 1991年)。シュールではあるのだが、それは (今の視点からすれば) 既に記号化された「シュール」であって、実際に名状しがたい気分に陥るわけではない。もっとも——、僕達がこれほどまでのシュール耐性を獲得できたのも吉田戦車の作品に拠る部分が大きいのだが。

文章家としても定評のある吉田戦車だが、本書にも『泣き虫四十歳』という付録小説が収録されている。マチ子の父・ジュンが主人公の短編であるが、吉田本人の顔も垣間見えるようで面白い。