- 『ゴルゴ13 第108巻 最終暗号』さいとう・たかを

2007/10/03/Wed.『ゴルゴ13 第108巻 最終暗号』さいとう・たかを

文庫版『ゴルゴ13』第108巻。

第373話『最終暗号』

「近代以降、暗号の作成と解読には強力な数学が必要とされた。多数の数学者が軍や政府に雇われ、暗号の仕事に携わった。暗号の研究が学問を発達させることもあったし、その逆もあった。暗号関係者の存在は、政治的理由によって隠蔽されることも少なくなかった」というのは、サイモン・シン『暗号解読』の書評で書いたことだが、そのあたりをテーマに描かれた作品。

世界中の情報を盗聴・解析するアメリカの NSA (国家安全保障局)。その力の根源は彼らが握る強力な暗号技術にある。しかし、NSA ですら解読できない「最終暗号」が、数学者・佐久によって考案されつつあった。リベラルな思想の佐久は、自らの暗号理論を軍事に転用することなく完成させたいと願い、秘密の場所で研究を急いでいた。しかし、NSA に居場所を突き止められるのは時間の問題である。そこへゴルゴが自ら護衛を願い出る——。

ファンの間では有名な、「戦術核を狙撃するゴルゴ」が拝める作品。

第374話『シャッター』

休暇のたびに写真撮影旅行に出かける、アマチュア・カメラマンのジョージ。ところが、彼がコロラドのスキー場での撮影から帰ってきた後、アマチュア・カメラマン連続殺人事件が発生する。事件を調べたジョージは、殺されたカメラマンが皆、自分と同じくコロラドのスキー場に旅行していたことを知る。ひょっとして、自分は「写してはいけないもの」を撮影してしまったのではなかったか。犯人は、それを抹消するためにカメラマンを殺害しているのではないか。

死にたくないジョージは八方に手を尽くして生存を計るが——。

第375話『S・F・Z スフォルツァンド』

いわゆる「戦中秘話」もの。

ロシアから流出した、大戦中におけるフルトヴェングラーの演奏テープを手に入れたブラウラー。彼は、その演奏が父の工場でなされたものであることに気付く。フルトヴェングラーの指揮に不自然な箇所があったこと、演奏会の主賓がヒトラーであったこと、そして、父がこの演奏の直後に自殺したことが、彼の記憶を確かなものにしていた。

テープを解析した彼は、演奏中に狙撃があったことを突き止める。果たしてヒトラー暗殺はあったのか。父の自殺との関係は——。

他の戦中秘話ものと同じく、ストーリーが非常によく練られた名作。