- Book Review 2007/09

2007/09/26/Wed.

日記でも少し触れたが、本書『笑犬樓の逆襲』は『笑犬樓よりの眺望』の続編である。『〜眺望』は筒井の断筆宣言とともに連載休止となったが、その後、筒井が各社と表現の自主規制に関する覚書を交わす中で、再び連載が再開された。

断筆後の筒井はいよいよ本格的に俳優、タレントとしての仕事に乗り出し、『〜逆襲』にもこれらのことについて多くの頁が割かれている。マスコミ批判、評論家批判も健在だが、筒井自身が述べるように、いささかのパワー・ダウンも感じられる。

え。わしか。わしは『狂犬樓の逆襲」というものを連載しておった。しかしなにぶんいい加減歳をとってからのエッセイでな、人間が穏やかになってしもうておって、最初の意気込みほど無茶苦茶はできず、読み返して見るとちっとも狂犬らしうないので、この連載は「噂の真相」がなくなって半年後に新潮社から本になって刊行されたが、その時のタイトルは『笑犬樓の逆襲』にした。

(『昔「噂の真相」という雑誌があった』)

個人的に懐かしく思いながら読んだのが以下のくだり。

舞台稽古の前日もまたオフだったが、これはスタッフが仕込みをするためであり、おかげでおれは前から決っていた姫路文学館での講演に行くことができた。演題は「現代文学の問題」だったが、二時間近くの長丁場だったし、心はすでに舞台に飛んでいるため、最後はトリゴーリンの例の長科白を自主トレさせて貰ったが、「この講演会で余興が出たのは初めて」と、主催者は喜んでいた。

(『「かもめ」稽古期間中は辛かった』)

この講演会を私は聴講していたのである。1999年 3月末、私は大学に受かって引っ越す直前のことであった。筒井が長い科白を延々とまくしたてていたこと、余興云々という主催者の言葉、これらのことはよく覚えている。ははあ、これが筒井康隆か、などとバカな感想を抱いたものである。