- 『総理の資格』福田和也

2007/03/02/Fri.『総理の資格』福田和也

小泉純一郎という総理はいったい何だったのか、というのは、もう少し時間が経たねば正確にはわからないだろう。とまれ、安倍晋三が総理大臣になって半年が過ぎ、そろそろ先の設問に一考してみるのも良いかもしれぬ。

本書は 3部構成である。

  1. 宰相の資質 I: 小泉純一郎
  2. 宰相の資質 II: 森喜朗・野中広務・田中眞紀子・安倍晋三
  3. いかにして日本国はかくもブザマになったか

本書の小泉論は、小泉首相が在任時に書かれたものであり、今から読むといささか情報が古いのは仕方がない。内容は「論」というほどではなく、例えば「『変人宰相』小泉純一郎の食卓」「『食べる総理』森喜朗の胃袋」などでは、小泉や森が行きつけの料亭やレストランに行って料理を食べ、いちゃもんを付けつつ、彼らの教養を論じるというまことに下品な企画である。大した本ではない。

福田和也は、文芸論などでは結構面白いのだが、時事評論になると何だか鼻につくことばかりを書くので下らない。本書の最終章も単なる保守の泣き言ばかりで、何か建設的な意見があるわけでもない。文芸評論とは、既に「ある」作品を論ずるわけで、その手法が現在の政局の評論にも通用するかといえばそうではない。それがよくわかる。逆に、過去の政治史を論評する部分などは興味深く読めたりはする。