- 『悪文』中村明

2007/02/11/Sun.『悪文』中村明

副題に「裏返し文章読本」とある。

私は悪文のファンである。例えば先日、岸田秀『古希の雑考』の一部を紹介したが、これなども典型的な悪文である。しかしパワーがあって読ませる。面白い。また、学童の文章というのも概ね悪文である。爆笑問題『爆笑問題の学校VOW』の書評で小学生の作文を引用したが、これまた衝撃の文章である。

本書にはそのような悪文が多数掲載されている……のを期待したのだが、全くの見当違いだった。

著者も、私が述べたような悪文の効果は認めている。

真剣な筆致から、いわば必要悪として生まれる読みにくい文章を含めて「悪文」というのなら、そのすべてが「名文」の対極に位置するとはいえない。悪文である名文さえ存在するという事実は明白だからである。

(「悪文の正体」)

そうなのだ。私はそのような「悪文」が読みたいのだ。しかし。

この本であつかう「悪文」は、単純明快に「へた」な文章だけである。以下、まともな文章を書くために、そういうまずい表現をいかにして避けるかを考えてみたい。

(「悪文の正体」)

マジで? 以下、文章を書くときの注意点が延々と続く。「文章読本」だから当たり前である。著者に責任はない。

著者は辞書の編纂や国語教科書の作成に関わったことのある人物のようで、内容は非常に「まとも」である。「段落は適度に分けろ」とか「読者の目で推敲せよ」などなど。良書ではあるだろう。しかし基本的に過ぎて、まともなレポートを提出できる程度に日本語が使える人間には、必要のないレベルである。