『まともバカ』と同じく、だいわ文庫である。やはり講演集。「知の毒」という、取って付けたような副題がある。「新編集」ともあるが、意味がよくわからない。だいわ文庫には謎がいっぱいだ。
仕方のないことだが、どこかで既に読んだ話が多い。本書では比較的、都市と宗教の話が多い。都市とは脳のアナロジーだ、というのは何度も読んだ。都市の建築物や構造物には設計図がある。それはもともと設計家の頭の中にあったものである。それをゴロンと「現実」に出してきたのが建物である。建物の中にいるということは、脳の中にいることだ。そこでは予測と統御が可能である。だから、ゴキブリという「自然」が出てくると大騒ぎになる。そういう話である。
都市における建築物と双璧をなすものとして、書物が挙げられる。例えばユダヤ人は都市の民族であるが、建築はやらない。代わりに、聖書 (旧約聖書) という、世界の全てを包含した 1冊の書物を作った。この話は初めて目にしたように思う。