- 『異端の脳がホンモノ!』竹内薫/茂木健一郎

2006/11/25/Sat.『異端の脳がホンモノ!』竹内薫/茂木健一郎

チープなタイトルである。中身も柔らかい。

科学はふつうに考えられているよりも曖昧な世界であり、「ネーチャー」や「サイエンス」などの権威ある学術誌に発表された学説が、1年もたたないうちに撤回されたり追試で否定されることも多い。逆に、ある学術誌に却下された論文が別の学術誌に掲載され、結果的に重要な進歩につながることもある。

つまり、今日の正統説 (通説) は明日の異端説であり、今日の異端説は明日の正統説かもしれないのだ。科学は白黒ハッキリつく単純な世界ではなく、かなり複雑で曖昧で、さまざまな可能性を秘めたグレー・ゾーンの世界なのである。

(「竹内薫の『異端論』」)

ということで、色々な学説を「正統派」「アウトサイダー」とラベルして紹介している。各々の学説には「キレてる度」「将来性」が最高四つ星で評価してある。ちょっと頭の悪い構成だが、誰がどんなことを言っているかを雑学程度に知るのには良いだろう。竹内薫の担当する「パート 1」では、重力から大陸移動説、哲学、小林秀雄まで幅広いジャンルの学説が紹介されている。

茂木健一郎の担当する「パート 2」では、脳科学の学説が採り上げられている。こちらは面白い。ペンローズ、エックルス、ペンフィールド、クリックなどの大物が、ああでもない、こうでもないと、心脳問題に対して様々な学説を提言しているのがよくわかる。どういう考え方があるのか、それを知るだけでもタメになる。各人の主著についても言及があるので、いずれ目ぼしいものは読んでみようと思う。