- 『宇宙からの帰還』立花隆

2006/11/03/Fri.『宇宙からの帰還』立花隆

宇宙飛行士達は、その宇宙体験で何を感じ、体験したのか。その内面に迫った立花隆のインタビュー。

宇宙飛行士は基本的に軍人であり科学者であり技術者であった。彼らは、宇宙で自らが感じたこと、またそれによって生じた内面の変化などを上手く表現しようとはしなかったし、NASA のスタッフも彼らにそんなことを求めなかった。だが、インタビューを通じて浮かび上がってくるのは、驚くほど似通った精神の変化の軌跡である。インタビュアーとしての立花隆の実力が発揮された 1冊といえよう。

「宇宙体験による変化などなかった」と述べる飛行士も少数はいる。しかし大部分の飛行士たちは、虚空に浮かぶ地球を見たとき、その神秘さによって「回心」といっても良いほどの宗教観の変化を受ける。自分が「悟った」宇宙規模的な律を伝道するために残りの人生を捧げている人間もいる。

宇宙という極限状態における彼らの体験は、我々の日常生活からは推し量ることが難しい。そこが何とも歯痒い。だが、彼らの体験後の変化に共通性がある限り、我々にもそのような精神が内在されている可能性は高い。地球にいながらにして、そのような劇的な宇宙体験をしたのが、例えば「月の中に金星が飛び込んできた」空海ではないか、という仮説を、後に立花隆は司馬遼太郎との対談で語っている。

死ぬまでに宇宙に行けたら行ってみたいものである。