- 『赤瀬川原平の名画読本』赤瀬川原平

2006/09/11/Mon.『赤瀬川原平の名画読本』赤瀬川原平

副題に「観賞のポイントはどこか」とある。世間で「名画」といわれているものを、とにかくその評価を外して自分の目で見る、という、当たり前だがなかなか難しいこの姿勢を基準にした名画案内。

名画というのは、いつまで見ても飽きない絵のことなのだ。名画に飽きたという人は、たぶん名画という肩書に飽きているのではないか。つまり名画という肩書だけ見て、その絵は見ていなかったのではないだろうか。

逆にまた、名画だから見るという人もいる。それはいいのだけど、「名画だから」というだけで見ているとしたら、それはやはり名画という肩書だけ見て感心していたのだ。名画だということだけに満足して、その絵は見ていなかったのかもしれない。

(「はじめに」)

本書で紹介されている名画は 15作。

  1. モネ「日傘をさす女」
  2. マネ「オランピア」
  3. シスレー「サン・マメス」
  4. セザンヌ「坐る農夫」
  5. ゴッホ「アルルの跳ね橋」
  6. ゴーギャン「タヒチの女たち」
  7. ブリューゲル「雪景色の狩人たち」
  8. レオナルド・ダ・ヴィンチ「聖アンナと聖母子」
  9. フェルメール「アトリエ」
  10. コロー「コンスタンティヌスのバシリカのアーケードから眺めたコロセウム」
  11. ロートレック「ムーラン・ルージュの踊り」
  12. ユトリロ「コタン小路」
  13. マチス「ピアノのレッスン」
  14. ルノワール「ピアノによる少女たち」
  15. アングル「泉」

それぞれについて、赤瀬川原平が舐めるように絵を見ていくその過程と、率直な印象が記される。いわゆる解説めいた文章はほとんどない。また、ルノワール「ピアノによる少女たち」、アングル「泉」をボロクソにけなしているのも面白い。

各絵画はカラーで大きく印刷されており、文章を読みながら何度も眺め直した。著者の観賞を追体験することで、「なるほどなあ」と思うこともしばしば。