副題に「観賞のポイントはどこか」とある。世間で「名画」といわれているものを、とにかくその評価を外して自分の目で見る、という、当たり前だがなかなか難しいこの姿勢を基準にした名画案内。
名画というのは、いつまで見ても飽きない絵のことなのだ。名画に飽きたという人は、たぶん名画という肩書に飽きているのではないか。つまり名画という肩書だけ見て、その絵は見ていなかったのではないだろうか。
逆にまた、名画だから見るという人もいる。それはいいのだけど、「名画だから」というだけで見ているとしたら、それはやはり名画という肩書だけ見て感心していたのだ。名画だということだけに満足して、その絵は見ていなかったのかもしれない。
(「はじめに」)
本書で紹介されている名画は 15作。
それぞれについて、赤瀬川原平が舐めるように絵を見ていくその過程と、率直な印象が記される。いわゆる解説めいた文章はほとんどない。また、ルノワール「ピアノによる少女たち」、アングル「泉」をボロクソにけなしているのも面白い。
各絵画はカラーで大きく印刷されており、文章を読みながら何度も眺め直した。著者の観賞を追体験することで、「なるほどなあ」と思うこともしばしば。