- 『戦後民主主義のリハビリテーション』大塚英志

2006/09/09/Sat.『戦後民主主義のリハビリテーション』大塚英志

副題に「論壇でぼくは何を語ったか」とある。

1990年代半ばから 2000年代半ばまでに、論壇で発表された多くの批評がまとめられている。テーマは一貫して、「サブカルチャーに墜ちつつある現代日本の、サブカルチャー側からの批評」、そして「護憲」である。

昨今、戦後民主主義の批判がかまびすしいが、現在の状態が悪いのは本当に戦後民主主義が悪かったからだろうか、という真摯な問い掛けがある。戦後民主主義が悪いと主張するその前提には、我々が戦後民主主義をきちんと生きてきたことが前提になる。「採用したけれどそれが悪かった」というのなら筋が通る、というわけだ。仮に我々が戦後民主主義を生きてこなかったのであれば、批判する以前に戦後民主主義を生きるという選択肢が存在するのではないか。むしろそういった主張は保守のそれとしてあるべきではないか、という大塚の論理はもっともにも思える。

以前から俺は大塚英志の主張には賛同しかねる部分が多いのだが、彼のこのような筋の通し方、理論の構築の仕方には素直に感銘を受けている。この方法論で書かれる物語論とか小説論は好きだし。批評となると、やたらに愚痴っぽかったり女々しかったりするのが残念に思えるが、そのあたりに彼のバランスを感じたりもするので、変なところで「面白いなあ」と思ったりもするんだよな。