- 『歴史の夜咄』司馬遼太郎/林屋辰三郎

2006/01/07/Sat.『歴史の夜咄』司馬遼太郎/林屋辰三郎

司馬遼太郎と、歴史家・林屋辰三郎による対談。話題は日本史で、特に古代から中世にかけて。日本人はどこから来たのか、日本はいかにして形成されたか、日本文化の源流とは。このあたりが大きなテーマとなっている。

俺が最も感心したのは、「前方後円墳は盾の形である」という話。主に林屋の説による。

そしてこの (仁徳天皇陵の) 前方後円墳というのは、たいへんに対外関係を考えた墳形なのですよ。(中略) あなとは仲よくしますという意味で、武器の盾を伏せた形なんです。(中略) 日本の帝王の陵墓が盾を伏せた姿をしているということは、中国に対して、当時は倭の国王ですから、卑屈な態度にとられては困るのです。だから大きくこしらえて、しかも海岸線に平行して、堂々とこしらえるのです。

日本ではもともと盾は人間がそこに隠れるものですから、人形がいちばんいいのですよ。そして戦争というのは、その盾を交えることで、盾交 (たたか) う。それから盾伏舞があるんです。盾を伏せるのは、戦いを止めることなんです。

古墳をつくってきたのは土師部です。ところが土師部が古墳をつくらなくなって何をはじめたかというと、舞人になった。盾伏舞の伝承者なのです。(中略) 盾伏舞というのは戦争をやめる舞、平和舞です。

証拠はない。が、それだけに斬新な説が、本書には満ち溢れている。