- 『司馬遼太郎が考えたこと 14』司馬遼太郎

2005/12/28/Wed.『司馬遼太郎が考えたこと 14』司馬遼太郎

司馬遼太郎随筆集第14巻。1987年 5月から 1990年 10月までに発表された文章が収録されている。

司馬遼太郎が大陸、それも蒙古や新疆といった周辺 (あくまで中華から見た周辺だが) や朝鮮、あるいは中国そのものに強い興味を持っていたことはよく知られている。彼らの風貌が特に鮮やかに浮かび上がるのは古代であり、その光芒が遥か日本列島に届いたことによって現在の我々がある。それが司馬の世界の一つの軸となっている。

大陸と日本の結びつけ方において、司馬の想像力には常に感心させられる。「大陸で鉄を作り過ぎたせいで渡来人が日本に来た」という説については、第9巻で紹介した。本書でも、例えば「華厳をめぐる話 (井上博道写真集『東大寺』)」で、タクラマカン砂漠で誕生した華厳経が日本に渡ってくるまでの風景が描かれる。もちろん証拠はない。しかし妥当性に富み、何よりもまずダイナミックである。

あれほどものを知った上で、なお妄想ができる。凄いと思うのだが。