- 『新解さんの謎』赤瀬川原平

2005/11/06/Sun.『新解さんの謎』赤瀬川原平

今更、という感もあるが、ついつい買ってしまった。簡単に紹介する。

「新解さん」というのは、三省堂「新明解国語辞典」のことである。辞典・辞書というものは常に正しくあらねばならず、それゆえに文章も最大公約数的な、無難な、没個性の、要するに「守り」の姿勢を貫くのが普通である。そこを「攻めている」のが新明解、いや、新解さんなのだ。

新解さん

新明解国語辞典から、一つの例を引用する。

れんあい【恋愛】
特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持を持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。(新明解国語辞典)

試みに、他の辞書で「恋愛」の項目を引いてみる。

れんあい【恋愛】
男女が互いに相手をこいしたうこと。また、その感情。こい。(広辞苑)
れんあい【恋愛】
男女が恋い慕うこと。また、その感情。ラブ。(大辞林)

新明解の「濃さ」が一目瞭然である。が、「新解さん」の楽しみ方は、そのような点を突っ込むことではない。異様に過剰な言葉の説明を拾い集めていく内に、一つの人格というべきものが浮かび上がってくるのだ。それが「新解さん」なのである。そこには物語があり、思想があり、人生がある。それを楽しもうというのが本書の目的である。

「新解さん」は数年前にブームになって、類書も出ている。また、ネットで検索すれば、大量の「新解さん」関連ページがヒットする。興味のある方は参照されたい。良い暇潰しになると思う。