- 『牧逸馬の世界怪奇実話』牧逸馬

2005/04/24/Sun.『牧逸馬の世界怪奇実話』牧逸馬

牧逸馬の『世界怪奇実話』を島田荘司御大が編集したもの。収録作は、

の 14編。

世界怪奇実話

牧逸馬という名前に聞き覚えはなくとも、『丹下左膳』の著者・林不忘の別名といえば、「ああ」と納得される方もいるだろう。本書は、牧逸馬こと林不忘こと谷譲次こと、本名・長谷川海太郎が著した『世界怪奇逸話』の精選集である。長谷川海太郎と本書の編集動機に関しては、編者・島田荘司による巻末の「めりけん・じゃっぷ、牧逸馬の謎」に詳しい。

『世界怪奇実話』は、牧逸馬がロンドンの古書店で買い占めた怪奇事件の資料を元に、実在の事件を読み物風に書き著したものである。今では日本人にも常識となっている「切り裂きジャック」や「タイタニック号」だが、本邦で初めて紹介されたのは、恐らく牧逸馬の『世界怪奇実話』が最初であろうと言われている。そういう意味で、資料としても本書は価値が高い。しかし何よりも、いまだ古びない面白さと、1929年に書かれたとは思えないほどの正確さ、資料の読みこなしに驚く。

「怪奇実話」と銘打つだけあって、どの事件も非常に不可思議なものである。知らない事件に対しては、探偵小説のように読むこともできる。しかも実際に起こった事件なのだから、謎の解明に至るスリルもひとしおである。