- 『女王の百年密室 GOD SAVE THE QUEEN』森博嗣

2004/05/24/Mon.『女王の百年密室 GOD SAVE THE QUEEN』森博嗣

本作はファンタジー的SFの味付けがなされた探偵小説、とでも言えば良いか。

ひょんなことから、150年以上も人目に付かずに放置されていたコミュニティーに、主人公・ミチルが訪れるところから物語は始まる。人口 300人あまりのコミュニティーは、外界とは全く異なる価値観で社会生活が営まれている。この集落に君臨する女王。

不可能状況下で女王の第1王子が殺害され、その謎を解く過程で更なる疑問が出てくる、という流れでストーリーは進む。殺人事件の謎は、犯人は、そしてこのコミュニティーが存在する理由とは?

ポエマー・森博嗣

森博嗣、俺の中で微妙な位置付けの作家である。作品を一言で言えば「つまらなくはない」。「面白かったあ」と思ったことはないが、特にハズレだった記憶もない。そういう意味で、安心して買って読める。やたらと出版ペースが速いので、買い置きだけしておいて、学会や就職活動で泊まるホテルで、暇つぶしに読んでいる。

ところで、この森博嗣という作家、「小説はビジネスとして書いている」と公言してはばからない。別にその姿勢は否定しないし、むしろエンターテイメントの作家として好ましくすらあるのだが、果たしてそれは本当かな、というのが俺の実感である。

どうにもこの人の書く「ポエム」がね、俺には「ビジネス」と結びつかんのだよ。確かにこの手の「ポエム」に反応する読者たちをコア・ファンとして獲得できれば、それは相当に固い収入源になるだろう。だからビジネス戦略として「ポエム」を書くのは、かなり有効な手段だと言える。しかしだな、そのような思考ができる人には、あの「ポエム」は書けんと思うのだよ。あれは彼の本質という気がするのだが。

いやね、それが本質であれば、それはそれで良いのだよ。だけれど、そうすると今度は「ビジネスとして書いている」というのが嘘臭くなる。そこまで格好付けなくても、と思うんだよなあ。

(わざわざ「ポエム」とカッコ付きで書いているのは、それが「詩」とは別物と判断しているからだ。詩とポエムの違い、これは義兄弟の間でのみ通じるジャーゴンなのだが、なんとなく理解して頂けると思う。たまにこういうことを書きたくなるんだが、いずれまた「Special」に「文学・歴史」関係のコーナーでも立ち上げてみるか)