- Quote: 文章の敵

2013/02/20/Wed.文章の敵

われわれは、村落共同体のなかに何千年も生きてきて、言葉を使うことはお辞儀をしたりお茶を勧めたりすることによく似ている、と思ってしまった。中身のない挨拶をすることが言葉を使うことだと思い込んでしまった。この思い込みが日本語の文章の敵なんです。お愛想ではなく、中身を語ること、中身を相手に伝えることが文章の目的なんです。

[略]

書くべき内容がないから挨拶を書く。挨拶はダメだという基本の文章心得を知らないから書く。「挨拶は書かない」、これを現代日本人の文章心得にすべきなんです。

(丸谷才一『思考のレッスン』「レッスン 6 書き方のコツ」)