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2013/03/12/Tue.特別攻撃隊

もともと零戦には腹に燃料タンクを抱え、空になった時切り離す装置があった。このタンクのかわりに二五〇キロ爆弾を吊垂出来るように改良を加えたのが最初の工夫であった。

攻撃法として「反跳爆撃スキップボム」が研究された。これは水面上一〇メートルを飛行し、目標の三〇〇—二〇〇メートルまで接近して爆弾を投下する、それを水面で跳躍させて、目標の艦船の横腹に命中させるのである。

この攻撃法は元来ミッドウェイ海戦の時米軍のパイロットが発明したものを模倣したもので、熟練を要する上に、投下後二、三秒で敵艦上を通過することになるから、被弾の確率高く、ちょっと操縦を誤れば自爆となる。生還率一パーセントという数字が出た。特攻精神はこの時芽生えていたのであった。

この方法はマリアナ海戦の時、一部航空戦隊によって採用されていた。この海戦が敗北に終った時、「千代田」艦長城英一郎大佐が、非常手段として特別攻撃隊の組織を上申した背景には、こういう技術的問題があったのである。

(大岡昇平『レイテ戦記』「十 神風」)